「興奮」と「尊敬」を与える車いすバスケ
ある男性は「想像以上の激しさがあってビックリした」と驚嘆した。ある女性は「何であんなに速く動けるんだろう。アスリートとして純粋にかっこよかった」と感嘆した――これは、「車いすバスケットボール」を初めて観た人々の感想だ。
車いすバスケは、いわゆる「障がい者スポーツ」の競技の一つだ。障がい者スポーツというと、どうしても「リハビリ」「レクリエーション」というキーワードが連想され、「激しさ」「スピード」というイメージは涌きにくい。事によっては「障がいを持つ可哀想な人々が行うスポーツ」という目で見られてしまうことすらある。しかし、実際に生で観戦した人から漏れるのは、そうした感想ではない。
IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉で初めて車いすバスケを目にしたひとりで、ソウル五輪の金メダリスト、スポーツ庁初代長官の鈴木大地氏も「激しくてアグレッシブで、恐れずに相手にぶつかっていく。選手たちはアスリートであって、ファイトあふれるプレーには感銘を受けました。『障がい者スポーツ』というと、こういった激しいイメージは抱かないので、別の呼び方を考えていきたいと思う」と、競技を観た感想を語っている。
試合会場には車いす同士がぶつかり合う音が響き、コートとタイヤの摩擦によってゴムの焦げる匂いがしてくる。車いすを操る選手たちの腕はプロレスラーのように太く、間近で見ると圧倒される。このスポーツは、「可哀想」という感情どころか、その激しさと闘志から、観る人に「興奮」と、アスリートに対する「尊敬」の念を与えるスポーツといえるだろう。