「心拍トコトコレース」「Sky High」「超人将棋」――。2017年10月2日と同15日に開催された「超人スポーツ×超福祉展 “超福祉スポーツ”開発プロジェクト」では、2日間のアイデアソン、ハッカソンを通じて、情報化社会にふさわしい未来を見据えた新しいスポーツ「超福祉スポーツ」が開発された。

 今回は、開発された新スポーツの詳細を紹介する。

①心拍トコトコレース
 プレーヤーは自らの心拍数をコントロールし、コース上のロボットを操作する。スタート前に心拍数のデータを取得して標準値を測定。標準を上回るとロボットの速度は上がり、下回ると減速する仕様だ。コースは前半がゆっくりと物を乗せて走り、後半がスピード区画となる。会場では心拍数の変化をモニターで表示するなど、盛り上げる工夫もあった。

手前が心拍センサーを付けたプレーヤー。心拍数を上げるために体を動かしている。向こうに見える小さな黒い四角が心拍数に反応して駆動するロボット
手前が心拍センサーを付けたプレーヤー。心拍数を上げるために体を動かしている。向こうに見える小さな黒い四角が心拍数に反応して駆動するロボット
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②Sky High(「空飛ぶデバイスとスポーツ」改め)
 低い視点で空を飛ぶように走るデバイスというアイデア。「コース走行のタイムトライアル」「ボーリングのように何かを倒す」「カーリングのように決まった地点に止める」などの競技を考えている。競技としてのデザインは未定だが、オペレーターは搭乗者、外部の人の2通りを想定するしている。AR(拡張現実)・MR(複合現実)キットを搭乗者に装着することで、また違ったスポーツを作ることもできるとしている。

Sky Highでは、ボーリングのように倒すゲームなどさまざまなバリエーションが想定される。写真ではVR用の HMDを装着している
Sky Highでは、ボーリングのように倒すゲームなどさまざまなバリエーションが想定される。写真ではVR用の HMDを装着している
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 アイデアソンに来場した車椅子ユーザーが「車椅子の人ももっとスリルを感じたいし、アクティブに動きたい」という声をうまく反映できている結果となった。

③超人将棋(「ランダムルール人間将棋」改め)
 「動物将棋」の3×4のマス目を使って、人間が駒となって将棋をするイメージ。アプリも使用して、一つひとつの駒の意志が反映される仕組みを作り、誰か1人の頭脳による将棋ではなく、「みんなで指す」団体戦的な将棋を考案した。インクルーシブ(社会的包摂)であるために、どんな人でも搭乗できるモビリティーを開発し、使用したいとしている。

超人将棋は、駒一人ひとりの意志とチームの意志が統合されてゲームが進行する。アプリ上の投票で次の一手を決める仕様
超人将棋は、駒一人ひとりの意志とチームの意志が統合されてゲームが進行する。アプリ上の投票で次の一手を決める仕様
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 実演で一番盛り上がったのは心拍トコトコレースだった。心拍数を上げるためにプレーヤーが体をバタバタと動かしていたが、会場からは「体を動かさずに競技するルールもあって良い」「応援している人の心拍数を反映するのはどうか」など、実演に触発されてさまざまなアイデアが飛び出していた。

11月11日に実プレーへ

 「超人スポーツ×超福祉展 “超福祉スポーツ”開発プロジェクト」で発表された3つの超福祉スポーツは、2017年11月11日に超福祉展の会場で一般の来場者にテストプレーしてもらうところまで仕上げられる予定だ。各チームとも何とか1日で発表するところまで仕上げたものの、「まだまだ精度が低い」と、さらに完成度を高めていくために、今後チームで活動を続けていくという。

※「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」のウエブサイトは、こちら))

 この日、審査・講評したのは、渋谷区福祉部障害者福祉課課長の原信吉氏、超福祉展を主催・運営するNPO法人ピープルデザイン研究所の代表理事、須藤シンジ氏、東京大学先端科学技術研究センター教授の稲見昌彦氏の3氏。全体に対して概ね高評価は与えられたが、さまざまなアドバイスとともに厳しい指摘もあった。

写真左は須藤シンジ氏、右は稲見氏
写真左は須藤シンジ氏、右は稲見氏
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