銀行がビジネスシーズ探し

 スポーツのルーツはフィジカル、ノンフィジカルを問わず、狩猟石器時代にまで遡る、人間の本能に根ざしたものだという説もある。そこに誰もが関わりたくなる熱量を秘めている理由があるのかもしれない。

 また、「スポーツの産業化」という観点からも、新スポーツには可能性がある。このプロジェクトは、スポーツ庁の「スポーツ人口拡大に向けた官民連携プロジェクト『新たなスポーツの開発』」の委託事業でもあり、この日、スポーツ庁の森田なつき氏(健康スポーツ課 連携推進係)も来場しており、“超福祉スポーツ”が、「全く異なるアプローチで、スポーツの概念を大きく変えるもの」と評価するとともに、この開発プロセス自体が横展開で拡大することに期待を見せている。

 「地域や集まる人によって“超福祉スポーツ”の捉え方も異なるだろう。各地で開催し、開発プロセスを共有することに意義があり、横展開することで、新しいスポーツビジネスの可能性も生まれるのでは」(森田氏)。

 この事業を超人スポーツ協会などと共に受託しているみずほ銀行からは、産業調査部 戦略プロジェクト室 インキュベーション推進チームの目賀田克之氏が会場を訪れた。同氏は「参画の目的は新しいビジネスシーズ探し」と話した。目賀田氏のセクションでは、銀行のクライアント企業と共に横断的にビジネスを創発するためのインキュベーションシステムを構築する取り組みを進めており、その主要なファクターの1つにスポーツが挙げられているという。

 「超福祉スポーツには、社会課題解決をビジネスにできる可能性を感じた。うまく見極める必要はあるが、道具メーカー、興行、スポンサー活動など、さまざまなビジネスのシーズがあるのでは」(目賀田氏)。

 事務局の安藤氏も超福祉スポーツの産業化、ビジネス化を促進することが重要だと話している。これまでの超人スポーツは「作って楽しい」というフェーズにとどまってしまっている感がある。もちろん、社会的インパクトを出すためには継続せねばならず、持続可能性を求めるならビジネス化していく必要がある。「社会の役に立っているというやりがいだけじゃなく、“報酬”も必要だ」と安藤氏は言う。そのために今、検討しているのはスポーツを「表現」と捉え、渋谷をフィールドにした新しいアクションだ。近く具体的なプランが公開される予定とのことで、こちらも楽しみにしたい。

近未来のスポーツへ

 前編の冒頭で引用した星新一の『あるエリートたち』には、2つの教訓があると思われる。1つは“何一つ不自由のない暇な時間”が、近い将来日本で増えるであろうということ。稲見氏もこの短編が描いた世界が、近い未来の日本の姿の一側面であると予測する。

 そしてもう1つは「楽しむ」ということ。「“面白い”が人を駆動する」と稲見氏は言う。新しいスポーツを開発するには、「未来を見据える視点」と「心から楽しむ視点」。この2つが必要なことを、この短編は教えてくれているのかもしれない。

「超福祉展」開期中の2017年11月11日(土)、ケアコミュニティ・原宿の丘と東京メトロ渋谷駅13番口広場で、開発された超福祉スポーツ、超人スポーツを体験できる!。詳細は超福祉展のサイト参照