パラリンピック競技のサポートは模索段階

 先ほど述べたように、私の場合は主に映像を用いたサポートをしています。そのために欠かせないのが様々な機器です。カメラや三脚、パソコン、タブレット、モバイルプロジェクターなどはもちろんのこと、映像という大容量のデータをやり取りする必要もあるので、HDMIケーブルなども持っていきます。多いときは、今挙げた機器を数セット持って各地に出張していくことになります。

 オリンピック競技では、昔からパフォーマンス分析に取り組んでいましたし、それだけ多くの前任者もいました。従って、どのようなサポートが最適か、選手や指導者からはどのようなデータを求められるか、ある程度予測がつきます。つまり、年々サポートが洗練されて使用する機材も減っていくのです。実際、私がオリンピック競技を担当していたときはリュックサック一つで出張に行くことも多々ありました。

 対して、パラリンピック競技におけるパフォーマンス分析はまだ模索段階です。パラリンピック競技の選手たちはオリンピック競技の選手たちと視点が違うことも多いため、オリンピックで使っている機材をそのまま使えないことや、オリンピック競技では求められないデータを求められることもあります。そのため、使用する機材の数も、サポートするにつれて増えている状態です。

スライドの左がオリンピック競技の機材例。スライドの右がパラリンピック競技の機材例。パラリンピック競技の場合、選手や指導者からの突発的な要望にも応えられるように多くの機材を準備しているという
スライドの左がオリンピック競技の機材例。スライドの右がパラリンピック競技の機材例。パラリンピック競技の場合、選手や指導者からの突発的な要望にも応えられるように多くの機材を準備しているという

 ちなみに現在使用している機材の多くは民生品です。本来であれば多額の費用をかけて分析用の環境やシステムを構築するのがいいかもしれませんが、競技団体や協会側が「こういう分析ができるようにしたい」と言った時に、工夫をすれば費用をかけなくても環境を作ることができるんだと示したいので、このように対処しています。

(後編に続く)