経営が厳しくなると、どこの工場も徹底した経費の削減に取り組む。その際、経費の中身を区分して見ているだろうか。

 実は削減対象となる固定費の中には、現在の事業のための費用と、将来を見据えて次なる布石を打つための費用の両方がある。これをどれだけ意識しているかが肝心だ。将来に向けて今打つべき手は何かを意識している企業では、後者の費用を「布石費」というような言い方で、現在の事業を行うための費用と分けて管理している。

 経営が厳しくなれば経費削減を徹底するのは当然だが、だからと言って“闇雲に削減”すればいいというものではない。一律に削減するだけでは布石費まで削ることになり、明日の飯のタネを失ってしまう。そうなると、種蒔きができていないのだから、いざ次の事業展開を行おうにもたやすく他社に先を越されてしまうことになる。単に固定費の合計だけを見て、一律に削減するのではなく、その先の展開に向けた費用を確保しておくことが大切なのだ。

次なる打ち手は明確か

 ここで肝心なのが、次に向けて打つべき手が明確になっているかということ。中小企業の中には、現在の事業を維持するのに精一杯で将来のことまで考える余裕がないというところもあるが、大抵の企業はそれなりの中期戦略や中期計画を策定しているはずだ。

 ただし、それが成り行き任せの中期予想であっては意味がない。環境変化を踏まえてどんなビジネスをどう拡大するか、そのために打つべき手は何かを明確にし、その実現のために必要な経営資源(人、技術、金など)の確保と具体的な推進計画を示す。そうした中期経営計画・中期戦略がしっかりできていることが、布石費を分けて管理することの前提となる。