日本の製造業は、リーマンショック以降の大幅な円高と共に、派遣法改正問題や二酸化炭素排出量25%削減といった政策の後押しで、一気に生産を海外にシフトした。多くの企業が国内製造拠点の閉鎖や縮小に見舞われ、リーマンショック前には1170万人いた製造業の就業者数は、2012年末には1000万人を割るまでに減少した。

 そんな中で団塊の世代をはじめとした多くのものづくり人材が、ものづくりの基本や技術伝承する時間もないまま退職。その後アベノミクス効果もあって、製造業の就業者数は若干増加したものの、ものづくり力を取り戻せていない日本企業は多い。

図 製造業就業者数の推移
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図 製造業就業者数の推移

ものづくりを支える人材の枯渇

 実際、日本の製造業での「現場力の低下」は明らかだ。以前の日本の現場ではどの企業でもQCサークル活動が行われていた。誰もがQC7つ道具を勉強し、QCストーリーにのっとって小集団活動を行っていた。日本の品質の良さは、皆がQCの基本を理解し、自ら改善に取り組むという現場力に支えられていた。

 ところが、派遣社員の増加や、小集団活動への残業手当問題の浮上などから、そうした活動が停止してしまった企業は多い。その結果、かつては誰もが知っていたQC7つ道具さえ知らない現場作業者が大半を占めるという企業が少なくない。以前は誰もがバラつきを抑えることの大切さを理解し、ヒストグラムを作成して工程能力(CpやCpk)を把握して対策を講じたり、現場で管理図を作成したりしていた。ところが、今の日本で管理図を作成している現場などほぼ見なくなった。

 バラつきがなく、どの商品を買っても品質が良いという「日本品質」は、QC活動などの現場の取り組みから生まれたのだが、今ではその姿を日本の現場で見ることは少なくなった。