以前、本コラムで「滞留資産を廃棄すると利益は減るが、利益が出ている時に廃棄をすると逆にお金は増える」と述べた。滞留資産の廃棄によって利益は減るものの、利益が減った分だけ支払う税金も減るので、その分のお金が増えるからである。しかし、経営を進める上で一番重要なのは、キャッシュフローだ。そのためには、誤った利益の出し方をしては具合が悪い。
確かに利益を出すことは、お金を増やす上で最も重要なことに違いない。しかし、上述のように廃棄すればお金が増えるにもかかわらず、利益が減ることを嫌って使いもしない滞留資産をそのまま保管するというのは、キャッシュフローという視点からは“誤った判断”と言わざるを得ない。お金のことを理解せずに、“利益だけ出せば良い”といった経営を押し進めると、下手をすると倒産の危機に陥りかねない。そういう意味で、間違った利益の出し方だけはしないようにしたい。
利益は上がっているのにお金が減る?
では、利益が上がっているのにお金が減るのはどういう時だろうか。例えば、売れないのにどんどん生産して在庫を積み増すとどうなるだろうか。その場合、製造原価の総額は増えるが、大量に生産することで1個当たりの固定費は下がる。売上原価は、その期の売上高に関係した分の原価であり、製造原価の増分は棚卸資産(在庫)として残るだけで1個当たりの固定費が下がった分だけ売上原価も下がる。従って、仮に売上高が前期と変わらなくても売上原価の減少分だけ利益は増えるのだ(図)。