さまざまな企業の多くの工場を訪問するが、診断などをする場合は、まず産業廃棄物置き場(産業廃棄物も資産だが、分かりやすくするため以後ゴミ置き場とする)を見せてもらうことにしている。それは、ゴミ置き場に捨てられているものは、もともとお金を出して買ったにもかかわらず何らの理由でムダとなりゴミ置き場に廃棄されているものだからだ。すなわち、廃棄されているものを先にチェックして、ゴミを出している現場を確認すると工場診断の効率が良いのである。

 恐ろしいもので、ゴミ置き場は、その企業の経営姿勢や経営体質を見事に反映する。業績の悪い企業であれば、多大な不良品が捨てられているということも多い。また、まだ使える資産が捨てられていることもある。その内容、量、管理の仕方は各企業でまちまちだが、そこには企業の取り組み姿勢の差がものすごく表れるのである。

毎朝ゴミ置き場を巡回

 少なくとも、ゴミ置き場にあるものは、お金を出して買ったものである。梱包のための補助資材も部品価格の中に入っている。ましてや、不良品ともなれば、材料に加工費までかけたものを廃棄していることになる。産廃業者に引き取ってもらうために“質量の管理や引き取り価格を適切に管理している”という説明を受けるときもあるが、こちらとしてはそんなことよりも、お金を出して買ったものがゴミ置き場に置かれているということに対して、「どれだけの危機感を持ち、どれだけ必死に削減しようとしているか」が聞きたいポイントなのである。

 それだけに、まずは経営トップ自らが、毎日ゴミ置き場を巡回し、いかにムダが発生しているかをチェックすることは、工場改善に極めて有効と言える。かつて筆者が海外で経営責任者をしていた時は、毎朝ゴミ置き場に行っていた。不良品をはじめ、昨日廃棄されたものの状況が一番分かるタイミングだったからだ。

 気になるものが廃棄されている場合は、すぐにその職場の責任者を呼んで、廃棄されたものの前で一緒に記念写真を撮ることにしていた。その目的は、これだけのお金を出して買ったものを捨てるのだから、申し訳ないお金の使い方をしてしまったという記録を残しておくということにある。通常は、叱ったりするのだろうが、面白いもので、一緒にその前で記念写真を撮るだけで確実にゴミ置き場に捨てられるものの量が減ってくるのである。現場にどれだけ意識させるかがいかに大切かということだ。