福田 現場にいないと、もっと言えば、真剣なサッカーに触れていないと、突然サッカー界で生きたいと思ったところでツテもないわけで、サッカー界におけるキャリアは歩めません。
とはいっても、サッカーだけではダメで、ビジネスパーソンとしてのスキルを身に付けた上で、将来ビジネスの世界で生きるか、サッカーの世界で生きるか、そこは本人のジャッジに任せればいい。これから求められる人材は、アスリートマインドを持ったビジネスパーソンか、ビジネスマインドを持ったアスリートという、まさにハイブリッド型の人材だと思います。そういう人材を僕らはずっと育成していかなければならない。そのための集団としてLB-BRB Bunkyoを、今後もずっと運営していこうと思っています。このチームはJFL(日本フットボールリーグ)も目指しません。関東リーグというアマチュア最高峰レベルで継続的に活動できればと思っています。
――学生時代には「文武両道」といわれますが、社会人になるとスポーツとビジネス、家庭の両立とはいわなくなりますよね。
福田 そうなんですよね。日本は仕事以外にサッカーなんかやっていたら、「仕事に気持ちが入っていない」と言われそうな文化じゃないですか。それは違うと思うんですよ。
22年間、サッカーで自分自身のアイデンティティーを築いてきたのに、いきなり「社会人になれ」と言われ、価値観の違う人の中に放り込まれます。もちろん、その中でもきっちりと認められる存在になるべきだとは思いますが、自分のアイデンティティーがサッカーを通じて築かれている以上、やはり「自分」を確認できる場が必要だと思うんですよ。常に素の「自分」に戻れる場というか。
僕らのアイデンティティーって、結局は「真剣にボールを追い掛けているサッカー小僧」なんです。そこに戻れる時間とコミュニティーがあれば幸せだと思うし、その中から将来は日本のサッカー界を背負っていく人材が出てきてほしいと思う。いや、正確に言うと「サッカー小僧」である自分を忘れないでおくことが、そういう人材を育てることになるんだと思います。
僕が52歳までに東京ユナイテッドF.C.を1つの形にしたら、同時にこのクラブが未来永劫存続し得るように、僕の後継者も育てておかなければいけません。事業とは、0から1にするステージは創業者のバイタリティーに依存しますが、組織を1から10に発展させていく人材の力も必要で、そういう人材をきっちり育てていく必要があります。
――一般的なサッカークラブの人々はこういう話はしないですね(笑)。
福田 いわゆるビジネスの世界で生きている人であれば、僕の話はスッと腹に落ちると思うんですよ。僕がいつも言っているのは「日本経済新聞を読めるサッカー選手を育てたい」ということです(笑)。毎日、日経新聞を気にするアスリートじゃないと。これからは「俺、アスリートだから難しいことは知らない」んじゃダメなんです。