メトロポリタン東京のど真ん中にビッグクラブを

――東京ユナイテッドF.C.の運営法人の共同代表である人見(秀司)さんは、「大学の資産を内向きに抱え込むのではなく、逆に外に開放し民間企業や地域と連携することで、新しいスポーツビジネスを東京23区のど真ん中で創造できると確信しています」と話していました。

福田 今は大学が抱えているインフラは当然に大学だけのものになっています。これを地元、地域に解放していくことで、大学自体が地域に根付いていかなければならないと思っています。そのためにも、大学と地域の架け橋として僕らのクラブがあるというような形を目指していきたいですね。このクラブを通じて、大学のインフラを外に解放し、開かれた大学にしていきたい。それを東大から始めたら、日本へのインパクトは大きいだろうと。

(写真:東京ユナイテッドF.C.提供)
(写真:東京ユナイテッドF.C.提供)

 そういうわけで、「このクラブのルーツは東大です」とあえて語りつつ、僕は東大サッカー部の監督も兼務して両クラブを一体運営しています。例えば、大学に新しいスタジアムが出来て、それが大学の技術とコラボレーションして研究対象のショーケースになれば、日本の企業も参入したくなるようなビジネスプラットフォームになるのではないでしょうか。

 最近、「日本版NCAA(全米大学体育協会)」創設を検討する動きもありますが、現実的には僕は難しいと考えています。結局は「草の根的に起きる既成事実を集めて、その結果が日本版NCAAだね」という流れが正しい順序なんじゃないかなと思っていて、それを僕らは東京ユナイテッドF.C.の運営という形で実践する。日本版NCAAという枠組みだけ用意しても、中で実行する部隊がいないとなかなか厳しいかなと。いきなり大学ラグビーや大学サッカーがコンテンツとして売れるかといえば、売れるようにはならないでしょう。

――「東京でダイバーシティーを体現し、みんなで1つになって応援しよう」といったスポーツ界のアイコンはまだないと思います。「東京ユナイテッドF.C.」という名称には、そうした思いもあるのでしょうか。

福田 まさにそうなりたいと思って、この名称にしました。「unite」とは何かを1つにするという意味です。ただ、「unify」(統一する)とは微妙に違っていて、「独自性を生かしたまま統一する」という意味になります。例えば、「ユナイテッド・ステイツ(合衆国)」は、一つひとつの州は独立したまま、1つの国家になっています。僕らが掲げる「TOKYO UNITED」も多様性をそのまま残しつつ、1つのグループにするという意味です。東京の多様性を取り込んだアイコンになりたいという思いを込めて、この名称にしました。

――チームではなく、監督自身のミッションや目標は。

福田 僕は今41歳なのですが、僕の父親は52歳で亡くなりました。父親の寿命は自身のベンチマークになっていて、52歳までに何か1つのことを成し遂げて、後進に譲っていきたいと思っています。もちろん生涯現役でいたいので、その後もまた何かやろうとは思うのですが、52歳までに東京ユナイテッドF.C.をJ1の王者にし、東京のアイコンになることが当面の目標です。

 しかしながら、僕はこのクラブをJ1で優勝させることが最終目標だとは思っていなくて、このクラブからサッカー界のみならずスポーツ界に人材を供給し続けることがもっと大事だと思っています。そのための1つの策として、僕らは「LB-BRB Bunkyo」というセカンドチームを既に持っています。

 つまり、現在、関東社会人リーグ2部に「LB-BRB TOKYO」(東京ユナイテッドF.C.)があり、それが2017年は関東社会人リーグ1部に昇格する一方、東京都1部リーグには関東リーグ昇格を目指すLB-BRB Bunkyoというチームがあります。名前を出すと混乱してしまうので、クラブからのリリースやホームページでは一切出していません。

 いずれトップ・チームはプロ化していくでしょう。ですが、仕事とサッカーを高いレベルで両立する社会人のチームも必要です。

 僕自身、サッカー界で生きていきたいと思ったときにキャリアパスが見えにくく、どうしたらいいかと模索しました。そこで、やはり現場に「何か」があると思い、2008年から母校である暁星高校のコーチを週末だけボランティアでやったんですよね。そこからいろんなことを考えて、この「東京ユナイテッド構想」を思い付き、人見(共同代表)と一緒に、このクラブをつくりました。