東京・文京区を拠点とする社会人サッカークラブ「LB-BRB TOKYO」(以下、LB-BRB)は、3つのビジョンを掲げ、2020年のJリーグ入りを目指している。3つのビジョンとは「国際社会をリードするグローバルリーダーの育成~文武融合の実践~」「東京23区内にJリーグクラブの創設~東京から世界へ、ビッグクラブ構想~」「東京を世界一の健康寿命へ~健康都市TOKYOの実現~」である。

 2016年12月5日には、クラブの名称を「LB-BRB TOKYO」から「東京ユナイテッドF.C.」に変更することを発表し、東京都を代表するビッグクラブを目指す方向性をこれまで以上に鮮明にした。興味深いのは、そのビジネスモデルだ。サッカークラブの経営でチームとは別に「弁護士法人」と「税理士法人」、スタートアップの支援事業を手掛ける企業の3法人を設立。グループ企業全体のビジネスをクラブの収益源にすることを目指すと同時に、所属選手のセカンドキャリアの開拓にも生かしていきたいと考えている。

 東京ユナイテッドグループの野望と展望を、前回に引き続き同クラブを運営する一般社団法人「CLUB LB&BRB」の共同代表理事であり、クラブ監督でもある福田雅氏に聞いた。(聞き手は、上野直彦=スポーツライター)

(写真:東京ユナイテッドF.C.提供)
(写真:東京ユナイテッドF.C.提供)

東京五輪が開催される2020年、Jリーグ入りを目指す

――新体制では「2020年にJリーグ入り」が目標なんですね。そこに向けての取り組みは。

福田 どれだけ地域と密着していけるかについては、正直なところやってみないと分かりません。これまでの1年間も様々なことに取り組んできましたし、今後も地域との連携を地道に進めながら、どこまで地域の応援を取り付けられるかに挑戦していきます。

 それに加えて、Jリーグ入りに必要なスタジアムが地元に無いことは最初から分かっていますので、無ければ「人」と「資金」を集めて造ってしまえばいいという発想でやっています。そのためには、嫌らしく聞こえるかもしれませんが、政界、財界、官界にパイプをつくり、あらゆる人をつなげて「ウルトラC」ができるよう、まだ言える段階ではないのですが、いろいろと動いています。

――JFAの監事という立場から、日本サッカー協会(以下、JFA)が社会でその存在意義を発揮していくには、具体的にどのようなこと必要だと考えていますか?

福田 僕は「日本社会におけるサッカーのステータスを変えたい」と常々考えています。「日本のサッカー界を変えたい」ではありません。サッカーのステータスを変えるという目的達成のために日本のサッカー界が変わらなければならないのなら変えていくべきでしょう。その際、JFAがどんなメッセージを打ち出していくのかは大事です。

 例えば、サッカー選手になることだけがサッカーの「夢」でしょうか。プロという道があるが故に、何となくサッカー人生のゴールが「プロサッカー選手になること」になってしまっている。そこには違和感があります。

 個人的には、スポーツの最大のアウトプットは「人材」で、「サッカーを通じてどんな人材を世に輩出していけるか」がサッカー界で最も大事なことだと考えています。サッカーのステータスを変えるべく、サッカー界が輩出してきた人材にフォーカスを当て、必要に応じてJFAから「社会におけるサッカーの意義」を訴えていくことが求められると思うのです。

 スポーツをやったことがない人の中には、「スポーツとは単に身体を鍛えるだけのもの」と考えている人もいます。でも、自分のことを考えると、それは違う。なぜなら、机で学んだことよりも、サッカーで学んだことこそが今の自分を形成しているのですから。

――東京大学卒の福田さんがそう話すと説得力があります(笑)。

福田 だから、僕は東大卒という経歴をあえて前面に出しています(笑)。大事なのは、スポーツをやったことのない人や興味がない人たちに、その価値を伝えるということです。スポーツをやったことのある人は感覚で分かるんですよ。やはり、スポーツはただ身体を鍛えるためだけのものではなく、自分を育ててくれたものだと。それを言葉にすることは、なかなか難しい。でも、僕はそれをしっかり言葉にしていきたいと思っています。若いころから「エモーションをロジカルに語る」ことは比較的得意なので。