福田 最終的には本人の意思とはいえ、プロの世界に引き込んだのはクラブですし、プロに向かないと思えばそもそも引き込んではいけない。入口におけるクラブの責任は重大です。だから、少なくとも自分のチームに来た選手たちだけには何か道を用意してやりたい。逆にそれを理解してくれない選手は来てくれなくていいよと。
生涯キャリア40年のうち、サッカー選手なんて10年やれたらいい方じゃないですか。セカンドキャリアといっても、むしろそっちの方がメインで、サッカー選手を引退してからの30年をどう生きていくか。そのために必要なスキルはサッカー選手をやりながらでも身に付けられます。Jリーガーとはいえ1日中トレーニングするわけではなく、2〜3時間練習して、あとの時間は遊んでいる人も多いでしょ(笑)。
それではダメだと思うんですよ。2時間でも3時間でもスーツを着て、何か別の仕事をするということを経験させたい。ワープロや表計算などのオフィスソフトを学ぶだけでも損はない。もちろんプロ選手としての誇りは持ってほしいけど、一方で社会人として見た時に、お前なんかまだペーペーだよという意識は持っていてほしいんですよね。サッカー選手のプライドだけ持って、引退してから社会に入っていこうとしても、誰にも受け入れてもらえません。
――サッカー選手のプライドがむしろ弊害になることもありますしね。
福田 ほぼ間違いなく弊害になります。それを選手に気づかせてあげないと、その後の人生に苦労すると思うんです。極端な話、下手にサッカー人生が長くなると、「ワープロや表計算ソフトなんて難しそうだから俺には無理だ」ということになってしまう。
そこで、東京ユナイテッドFCではビジネス部門として、弁護士法人と税理士法人、スタートアップ企業の支援コンサルティング業務を営む企業の3法人を設立することにしました。税理士法人とコンサルティング企業の代表には、前PwC代表の鈴木洋之さんが就任しています。
勉強を諦めている選手を支援をしたい
――コンサルティングファームのPwC Japanが関東2部のクラブのスポンサーになるのは大きな話ですよね。
福田 鈴木さんは僕の元上司なので(笑)。僕が最初に入社した会社がPwCなんです。僕は鈴木さんの鞄持ちをしながら、宴会セッティング係でした(笑)。退職後も個人的な関係が続いており、今回もサポートしてもらえることになりました。
――そして、チームキャプテンの黄大俊(ファン・テジュン)選手が、スポンサー企業の文化シヤッターに就職するんですね。
福田 テジュンがプロを辞めた後の道を模索していたので、この2年間は僕の下で「読み・書き・算盤」の勉強をさせていました。「そのうちに就職できるから」とは言っていました。スポンサー企業に就職できるのが理想だとは思っていましたが、こんな理想的な形になるとは思ってもいませんでした。
――クラブのビジネス部門3社のいずれかで、チームの所属選手が働く可能性もあるのでしょうか。
福田 もちろんです。ゆくゆくはそういう選手を獲得していきたいと思い、まずハコを作りました。今は職が無い選手はいませんので、これからですね。
――選手の「生涯キャリア」について、他に取り組みたいことはありますか?
福田 資格試験に興味のある選手なら勉強して資格を取らせたいですね。弁護士、税理士、公認会計士に限らず、どんな資格でもいい。とにかく、まずは成功体験をさせてやりたいと思っています。どんな資格でも結果が出れば、それだけで伸びる。サッカー選手で勉強を諦めている人にそういう支援をしたいと考えています。例えば、司法書士や社会保険労務士などの資格を取る人がいれば、それはそれでまた別の法人を展開できたら面白いと思っています。スポンサー企業との絆を深め、地元企業に就職させていくような「ジョブサポート型」と、2つのスタイルを考えています。
(次回に続く)