イミオ 代表取締役の倉林啓士郎氏が手にしているボールこそ、サッカーの国際大会「EAFF E-1フットボールチャンピオンシップ(旧EAFF東アジアカップ)」の公式球「VAIS pro」だ。

イミオの倉林氏(写真:福田 俊介)
イミオの倉林氏(写真:福田 俊介)

 2年に一度開催され、日本代表も出場するサッカーの国際大会の公式球に、国内ベンチャー企業のブランド「SFIDA(スフィーダ)」が選ばれた。スポーツ界でも、異例中の異例だろう。なぜ、そのボールが選ばれたのだろうか。

 イミオは、2015年に日本フットサルリーグ(Fリーグ)の公式球にも採用されている新興スポーツメーカーだ。フットサルをプレーする人であれば、知っている人は多いに違いない。だが、東アジアカップはフットサルボール(4号球)ではなくサッカーボール(5号球)だ。

 そこには約12年前、大学生でありながらイミオを立ち上げた倉林啓士郎氏のあくなき挑戦心と緻密な戦略があった。(聞き手は、上野直彦=スポーツライター)

東アジアカップの公式球に選ばれた秘密とは

―― 東アジアサッカー連盟(EAFF)の公式球の話は、日本サッカー協会からあったのですか。

倉林 Fリーグのスポンサーは、開幕戦や節目の試合をVIP席で観ることができるんです。そこにいつも田嶋会長や小倉純二名誉会長などJFAのトップがいらっしゃるので、フランクにお話しできる機会が多くなりました。

 そんな中、今回の東アジア連盟の話は急にアディダスが大会スポンサーを終了したという状況で、小倉さんとFリーグ試合会場でご一緒させていただいたご縁もあったという流れの中で決まりました。

―― 今回の話はいつ頃ですか

倉林 2016年4月くらいです。

―― 前回の東アジアカップは、柿谷選手が注目を浴びるなど、いわゆる国内組としては実力を見せるいい大会だったと思うのですが。

倉林 国内組を中心に日本代表を組む大会で、今年と来年が日本開催なんです。日本開催なのに良い試合球スポンサーが見つかっていないという状況でした。イミオとしては、正直フットサルではシェア拡大をしていたのですが、本丸のサッカー市場をこれから攻めなければならないという状況でした。そして、やるなら最新の技術を使った新しいボールを打ち出そうと思っていました。しかもこの大会は日本だけではなく、中国や韓国など他のアジアの国にもプロモーションできる機会です。これを契機にしてスフィーダで日本とアジアのサッカー市場を開拓していこうと決めました。

 来年からスフィーダでJリーグのチームのスポンサーになります。ここまできたら、スフィーダでサッカー市場もカバーできるようにプロモーションし、商品ラインを構築していきたいと思っています。

 サッカーボールのメインマーケットは学校への販売ですが、新しい技術で、しかも学校で買いやすい値段帯のボールを作れる技術と生産能力には自信がありました。ここは勝負をかけて、東アジア連盟と契約して公式球としてプロモーションをかけていこうと決断しました。来年からはこのボールを武器に学校にも積極的に営業をかけていきます。

―― 学校に販売する際のメリット、デメリットは。

倉林 ディスカウントは少ないですし、毎年定期的に買ってくれるなどメリットは大きいと思います。サッカーをやっている小学生から高校生までスフィーダを知ってもらえる機会としてもすごく大事なタッチポイントになります。

 最近は体育の先生が若くなってきて、今までみたいに地元の指定店からだけ決まった商品を買うのではなく、自分で選んで購入することが増えています。業界の商慣習が変わっていく中でチャンスは徐々に開かれていると思いますね。デメリットは特に感じません。

―― 今後のビジョンを教えてください。

倉林 スフィーダのボールがフットサルのトップリーグで蹴られたとき、自分としては非常に感慨が深かったんです。そして今回、スフィーダという世界的にも無名なブランドのサッカーボールを日本代表の選手が公式の世界大会の場で初めて蹴ることになる。もちろんテレビでも放送されます。日本とアジアのトップ選手が知ってくれて、認知してくれて、実際の蹴り心地などのクオリティーを確かめてもらえる。何より、スフィーダを知ってもらえることに意味があると思います。