新たな戦略、そして挑戦。自社ブランド「SFIDA」の立ち上げ

―― その後、イミオの商品開発は順調に進んだのですか。

倉林 2005年にパキスタンへ行ったときに、オリジナルブランドのサッカーボールを「スフィーダ」という名称で立ち上げました。イタリア語で「挑戦」という意味です。

―― ボールは大手ブランドの寡占状態だった思うのですが、どういった戦略で臨みましたか。

倉林 当時のボールといえば、白黒のサッカーボールしかありませんでした。しかも、デザインがイマイチ(笑)。大手企業がほとんど独占している業界でしたので、逆に僕らみたいなベンチャー企業にチャンスがあるんじゃないかと考えたんです。すごく大きな会社だとスピードも遅い。チャレンジは僕らの方がやりやすいところがある。

 ただ、スポーツ業界について何も経験や知識がない状態で営業に出掛けると、「スフィーダ」なんて名前をお客さんは知らないわけです。全然相手にしてくれない。スポーツ業界の商慣習や特殊な流通構造も知らなかったので、市場の開拓には苦労しましたね。

 初めの頃、スポーツショップやスポーツ競技系の流通は全滅でした…。ですが、そのときに唯一問い合わせがあったのがフットサルコートの運営会社でした。「オリジナルのボールが作れませんか?」という問い合わせをいただいたんですね。そのときにフットサル人気を初めて知りました。当時、いろいろな場所にフットサルコートができてきて、ありがたいことにフットサルチームやフットサルブランドのボールを作らせてもらえて仕事が徐々に増えていったんです。

(写真:福田 俊介)
(写真:福田 俊介)

 小学生用の競技ボールがダメ、大人の競技ボールもダメだったので、もっと下の世代向けの商品を作ろうとも思いました。小学校に入る前の幼児向けのボールということで、「フットボールZOO」というシリーズを立ち上げたのですが、今はかなり人気の商品になっています。本格的な手縫いボールに動物が描かれているデザインで、ご覧になった方も多いと思います。

―― 私の家やサッカーをやらない友人の家にもあります(笑)。アイデアは倉林さんですか。

倉林 当時手伝ってくれていた女性社員からの提案です。フットサルZOOは、今ではサッカーやスポーツ関連のお店だけではなく、子ども向けのハイエンドなセレクトショップでも取り扱ってもらえるようになりました。スポーツメーカーが本格的に作った子供向けの手縫いボールは、これまでなかったので。子供向けのファーストボール(生まれて初めて触れるボール)として人気となっています。逆にいうと大人向けには入り込めなかったんで、苦肉の策で生まれたヒット商品といえるかもしれません。

オリジナルデザインでも100個から扱う、大手にできない戦略で対抗

―― ちなみにオリジナルボールですが、何個から受注可能なのですか。

倉林 100個単位の最小ロットでもデザインを受けます。ミニマム100個からです。

―― え!? それで採算が成り立つのですか。

倉林 大丈夫です。まだまだ仕事がない最初の頃、オリジナルでボールを作りたいというお客さんからの問い合わせが多かったんです。僕らも大手のやれない新しいことをやっていかないといけないので、生産の効率化やデザインは、そこで鍛えられた部分もありますね。

 正直、100個だけ作ると、ビジネスとしてはなかなか難しいんです。ですが、ユニークなデザインのサッカーボールが世の中に出ていくことで、そこから先の展開で受注の個数が増えていくということも実績としてはあるんです。事業として利益が出るというより、会社としてのPRや新しいお話をいただく入り口としてサービスを続けています。