一緒に地元民として、我が町のクラブを応援しましょう

―― 明治安田生命で従業員に占める割合が一番多いのは、実際にお客様と接する現場のアドバイザーだと思います。現場の方は、Jリーグの取り組みをどう感じているのでしょうか。

西山 アドバイザーは地元採用です。その地域で生まれ育った、または転居してきて長く住んでいるという方が多く、地元に対する愛着、愛情を持ち、「地域で生きている」という意識が強いのです。

 これまでアドバイザーたちがそれを表現する手法が、生命保険という本業ではあまりありませんでした。新たに、それを表現する手法を提供したのがJリーグとの取り組みです。

 本業の保険やサービスを提供する以外に、一緒に地元民として、我が町のクラブを応援しましょう、そういう共感軸を持つことができます。そういう風にコミュニケーションできるということを、仕事としてやってもいいんだよ、となったことは、新しい武器をアドバイザーたちに持たせることができているのではないかと思います。

―― 実際にアドバイザーの方からどんな声がありますか。

西山 「地元の方に声を掛けやすくなった」という声があります。毎週のように行われる試合が共通の話題になり、ここまで地元のチームが頑張っているから、一緒に応援しましょうという声を掛けやすくなった、というわけです。

明治安田生命保険 営業企画部 営業企画グループの西山 英之氏(写真:筆者)
明治安田生命保険 営業企画部 営業企画グループの西山 英之氏(写真:筆者)

 実は、我々が1つ心配していたことがありました。Jリーグのファン・サポーターの方々は長きにわたってクラブを愛してきた人たちが多い。その人たちに対して我々がいきなり「タイトルパートナーになったから、一緒に応援しましょう」とずけずけ入っていったら、ネガティブな反応が起きやしないかという緊張感がありました。

 そこで従業員に徹底したのが、常に謙虚に、新参者として教えてくださいというスタンスでファンの方やコアなサポーターの方に関わるように、ということでした。

 例えば、J2の「ロアッソ熊本」の公式戦でイベントを手がけた時のことです。ロアッソ熊本のコアなサポーターの方々が来てくれて、クラブについてあまり知らない私たちや、イベントに来て初めて観戦するという人たちに、「ロアッソのチャントはこういうもの、こういう時にコールはこのようにしています、身振り手振りはこうやります」ということを全部教えてくれました。試合の後に当社の熊本の支社長が挨拶した時に、ゴール裏のコアサポーターの方々が明治安田生命コールをしてくれて、感動して従業員が涙をするということもありました。

 これは昔から地元のクラブを応援してきた人たちに認めてもらえたという意味で、我々のやり方やアプローチが間違いではなかったと確認できた瞬間でした。

 その後も、いくつかの会場でそういうことがあって、福岡でも「明治安田生命ありがとう」という横断幕をサポーターの方に掲げていただきました。これはお金だけでは生まれてこなかったことで、一緒に同じ目線で、ともに応援するというアクションがあったからこそだと思っています。

―― そういった地域に根ざした活動に加え、今回デジタルの「Club J.LEAGUE」というスマートフォンアプリでの挑戦がスタートしました。これにはどんな背景があったのですか。

西山 保険業界には「年々、お客様と対面による接点を取りにくくなってきている」という現実があります。昔と違って職場もセキュリティーがあって簡単には入れないですし、自宅もお昼時にいけば昔は誰かがいて、ピンポンすれば出てくる、お話ができるという時代ではなくなってきています。

 でも、やはり対面によるコンサルティングは商売の基本なので、対面のきっかけはもっと増やさなければなりません。その中の1つに、従来のマスメディアで一方的に広告宣伝を送りつけるだけではなくて、双方向でお客様との接点をつくり得る方法が、デジタルメディアだろうと考えていました。そのタイミングでアプリの話が出てきて、デジタルとJリーグの組み合わせで新たな接点を作れそうだということで始めました。