リオ五輪が日本時間8月22日午前の閉会式をもって閉幕する。これまで3回にわたって、ユーフォリア共同代表取締役の橋口寛氏と宮田誠氏に、スポーツビジネスの視点に立った現地レポートを届けてもらった(第1回第2回第3回)。今回は連載の最終回。テレビの画面から伝ってくる選手の活躍とは異なる、現地に行かないと決して体験できない「五輪の素晴らしさ」を伝えてもらう。

 リオデジャネイロ五輪を視察して改めて強く感じたのは、スポーツの素晴らしさ、そして五輪の素晴らしさだ。五輪は世界中から観光客が集まってくるイベントである――。そのことは、概念としては理解していたつもりだったが、その様子を目の当たりにするとインパクトは強烈だ。

それぞれ自国の国旗をまとった観客が交流(写真:ユーフォリア)
それぞれ自国の国旗をまとった観客が交流(写真:ユーフォリア)
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 通常は夜間に人が出歩くのは極めて危険とされる場所(例えばマラカナン地区の路上)を、世界中の国旗を身にまとった人たち、ユニホームを着た人たちが笑顔で歩くさまは、本当に素晴らしい。現地生活の長い人によると、それは五輪が始まるまでは信じられないような光景らしい。「深夜のマラカナンをこれほどの人が歩いているなんて奇跡だ。五輪が実現した奇跡だ」とその人は表現していた。

 筆者らは、バッハ地区(水泳、体操、柔道)、マラカナン地区(陸上競技)、リオセントロ地区(卓球)、デオドロ地区(ラグビー)の4つの地区を回って競技を観戦したが、どの会場の雰囲気も素晴らしかった。どの地区でも、観客はそれぞれの国のユニホームを着こみ、国旗を掲げてパーク内を練り歩いていた。その中でも特に素晴らしかったのが、デオドロ地区のラグビー会場だ。

世界の多様性を体現

 もともと7人制ラグビーは対戦相手をリスペクトする大きなファミリーのようなカルチャーがある。毎年、各国代表チームが世界各地を転戦するワールドシリーズの各大会は音楽フェスティバルのように盛り上がる。それが五輪のカルチャーと融合し、さらに明るいリオっ子の観客やボランティアスタッフのノリと一体となって、まるで“夢の国”のような様相を呈していた。

 ビールを飲み、誰かれとなく写真を取り合い、ハイファイブをし、ハグをし、笑い合い、お互いの国のことやラグビーのことを語り合う。

ラグビー会場で見かけた観客。まさにお祭り(写真:ユーフォリア)
ラグビー会場で見かけた観客。まさにお祭り(写真:ユーフォリア)
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 そこにあふれるものは、ユーフォリア(多幸感)そのものだ。お互いの違いを尊重しながらも、それぞれが全力で声援を送る。そして試合が終わればお互いに拍手を送り合う、それは世界の多様性をそのまま体現したような光景だった。