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スポーツ、世界への突破力

ラグビー日本代表、チームを構築したリーダーシップ

荒木香織氏が語る「心の鍛え方」(前編)

2016/10/06 00:00

久我 智也

 2015年のラグビーワールドカップ(W杯)で優勝候補・南アフリカを破り世界を驚かせたラグビー日本代表。この躍進は、戦術、スキル、フィジカル、そしてメンタルの4つのトレーニングを徹底して行うことで成し遂げられた。このうち、メンタルトレーニングのコンサルタントを任されたのが、園田学園女子大学教授の荒木香織氏だ。荒木氏が「IT Japan2016」(主催:日経BP社、2016年7月6日〜8日)で語った、日本代表を変えた心の鍛え方について、談話形式で2回に渡ってお伝えする。

メンタルトレーニングに方程式はない

 2012年、オーストラリア人のエディー・ジョーンズさんがラグビー日本代表のヘッドコーチに就任しました。エディーさんのそれまでのW杯の勝率は9割以上、たった1度しか負けたことがないというすごいコーチです。そんな人が、それまでW杯で1度しか勝ったことがない日本代表を率いることになったのです。

 彼がまず立てた目標は、当時15位だった日本代表の世界ランキングを10位まで押し上げることでした。目標を達成するためエディーさんはさまざまな工夫を行い、その1つがメンタルを鍛えることでした。

 私が要求されたのは「日本代表のマインドセットを変えてください」ということです。「マインドセットは変えられるものなのですか?」と聞かれることがありますが、変えることができます。ただし、必ず効果がある魔法のようなテクニックや、方程式のようなものがあるわけではありません。スポーツ心理学の理論に則り、さまざまな考え方や手法を駆使しながら、その組織や個人にあてはめていくことで、変化をもたらせるのです。

講演を行った園田学園女子大学教授の荒木香織氏。メンタルトレーニングコンサルタントとして数多くのアスリートにプログラムを提供するほか、企業研修や教育機関などでのセミナーも行う。ラグビー日本代表には2012年から参加。日本代表へのコンサルテーションを行い、W杯での躍進を支えた
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メンタルトレーニングは「自分自身を知る」ことから始まる

 アスリートにとって身に付けておきたいスキルの1つが「自分自身を知る」ことです。日本代表になるような選手であっても、自分が得意なプレーや自分の強みなどに、実は気づいていないということがあります。また、「自分の課題は何か」、そして「それを克服するためにはどんなことが必要か」ということを考える作業が重要です。さらには、ネガティブな思考や感情についてはどんどん対処できるように「自己制御力」をつけていくことも必要です。

 メンタルが強い人というのは、自分のことを良く知っていて、課題が出てきたときにどう対処すればよいかを理解している人のことです。生まれつきメンタルが強いわけでもなく、ただ闇雲に同じ練習を繰り返せばメンタルが強くなるわけでもありません。大舞台で実力を発揮するためには、メンタル面も含めた上で強化と準備を行わなくてはならないのです。

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