――市立吹田サッカースタジアムで短工期かつローコストが実現した要因はどこにあるのでしょうか。
募金による総事業費は140億円で、工期は2013年12月から15年9月までの22カ月間と非常に厳しい条件。「工期もお金もない。どうする?」というところから始まりました。
それでも工期通りに完成させるため、設計と施工が一緒になってアイデアを出し合った。着工の1年半前から会議を重ね、着工時には既に会議は100回ほど。それくらい事前にプロジェクトのつくり込みをやったということです。設計・施工一貫だからこそ実現できたといえます。
――具体的にはどのようなアイデアを実現したのですか。
まず、プレキャストコンクリート(PCa)化することで職人の数を絞り込みました。プロポーザルで設計・施工を受注したときは鉄筋コンクリート(RC)造の在来工法でした。基礎工事、地上躯体ともに工程上は1日当たり350~400人の躯体職を必要とする計画。しかし東日本大震災の復興による職人不足のなか、そんなに人手が確保できるのか、と。私は集合住宅のチームリーダーも務めていますから、このスタジアムにそんなに多くの職人が行くと他の工事が進まなくなることが心配でした。
PCa化した結果、これまでは5~10%にとどまっていた職人の削減効果が、今回の基礎工事では95%の躯体職削減につながり、大きな成果を上げたと思います。人が現場に入らないということは、けがをするリスクも減ります。そういう意味でも安全や品質などがPCa化でより向上したプロジェクトです。
私がこれまで実践してきた「少数精鋭」の結果、管理職4人、20代のスタッフが7人の計11人で延べ面積6万4000m2の施工管理ができました。
広大な敷地を11人で管理するため、手薄な部分が出ないようドローンを飛ばすなどして補いました。スタジアムの屋根を組み上げるためには地上40mの高所作業が必要だったんですが、地上からドローンを飛ばして高所作業をカメラを通じて見守り、トランシーバーを通じて指示を出したりしました。安全帯の確認などもドローンから「大丈夫か?」と声をかけ、作業者はそれに応じてカメラに向かって手を振って確認するなどしていました。