ラグビーW杯は、サッカーW杯や夏季五輪に次ぐ、世界を代表するメガスポーツイベントの1つといわれる。世界から20カ国・地域の代表チームが出場し、世界一を競う。2019年9月20日の開幕戦から同11月2日の決勝まで約7週間にわたって、北は北海道から南は九州まで12カ所の試合会場で48試合の熱戦を繰り広げることになる。組み分け抽選会には安倍首相も登壇し、国を挙げて大会を盛り上げる意気込みを演出した。
今回、組み分けが決まったことで、大会の成否を左右するプロジェクトの1つが本格的に動き出す。48試合の観戦チケット販売だ。大会の運営を担う公益財団法人の「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」は、このチケット販売やマーケティングを担う正職員の公募を2017年5月24日に始めた。募集期限は同年6月20日までで、応募者との面接を随時進めて採用を決めていく。
2019年の日本大会は、世界のラグビー界にとって初物づくしの大会だ。1987年の第1回大会から前回の第8回大会まで、ラグビーW杯は英国やフランス、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカというラグビーが人気スポーツでファンが多い伝統国で開催されてきた。日本大会は、非伝統国かつアジアでの初開催、そして7人制ラグビーが五輪競技になってから初めてのW杯という大会である。
そうした中、日本大会が掲げるチケット販売数の目標は200万枚と高い。ちなみにラグビーの母国イングランドで開催された2015年大会のチケット販売数は247万枚、世界一の代表チーム「オールブラックス」を抱えるニュージーランドで開かれた2011年大会は135万枚。イングランド大会のチケット収入は2億5000万ポンド(約355億円)だった。日本大会の200万枚という目標がいかに高いものであるかが想像できるだろう。W杯は国際競技団体「ワールドラグビー」の主な収益源で、世界のラグビー界にとっても大きなチャレンジである。
組織委員会がこの目標達成に向けて今回募集している人材は、チケット販売やマーケティングを統括するマーケティング局のトップ(局長)をはじめとする4人。このほか、経営戦略の担当者と、人材採用の担当者をそれぞれ1人ずつの合計6人を公募する。組織委員会で今回の人材募集の担当責任者を務める中田宙志氏(企画局兼総務局 主任)に、公募の狙いや期待する人材像などを聞いた。実は、中田氏自身も三井物産を退職し、2015年5月に組織委員会に飛び込んだ人物だ。
間口を広げて「プロ人材」を採用
―― 今回の公募の狙いを教えてください。
中田 まだ時期は確定していませんが、5月10日の組み分け抽選会の結果を受けて、2018年以降、チケット販売を開始します。それに向けてセールスやマーケティングの「プロ人材」を採用し、観客動員の取り組みを強化することが目的です。
―― 現在の組織委員会の体制は。
中田 約100人の体制でプロジェクトを動しています。このうち20人弱が正職員で、そのほか開催自治体や国、企業からの出向者で構成されています。今後、ピークには200人以上の体制になる予定で、関連企業や自治体などの多くの関係者と一緒に大会を作り上げていくことになります。
組織は、12会場の運営を担う「ベニューチーム」や、開催都市やその周辺地域の盛り上げる取り組みを担当する「シティーオペレーション」、参加チームの宿泊や警備、ロジスティックスを担当する「トーナメントサービス」、実際の試合を運営する「ラグビーサービス」、経営や財務などを担う「経営企画」で構成されています。そして、もう1つが今回公募の対象となる「チケッティング・マーケティング」の部門です。大会の収益化を担うことになります。
―― チケット販売やマーケティングの「プロ人材」として、企業からの出向ではなく、正職員を採用するのはなぜですか。
中田 もちろん、企業などからの出向者もプロ人材です。ただ、これまでの出向者の多くはラグビーのトップリーグのチームを持つ企業や広告会社の社員でした。今回は対象を広げて、幅広い業界の人材から適切な人を採用したいと考えました。
200万枚というチケット販売数は、プロ野球の「北海道日本ハムファイターズ」が2016年に集めた年間観客動員数とほぼ同等。これを7週間48試合の大会で実現しようということなので、単一スポーツの大会としてはかなり大きなチャレンジです。