2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて政府が掲げた「ホストタウン」構想。大会参加国・地域との人的・経済的・文化的な交流を通じて、地方自治体が地域の活性化につなげていく動きとして期待を集めている。

 2016年12月時点で138の地方自治体がホストタウンとして登録。63の相手国・地域との交流が決まっている。ただ、積極的に活動を始める自治体がある一方で、「登録はしたものの、何をしたらいいか…」という悩みを抱える自治体も多いのが実情だ。ホストタウンの取り組みを「ソーシャルイノベーション」につなげるためには、自治体をはじめとする様々な関係団体が地域の垣根を越えて情報交換・切磋琢磨する横のつながりが不可欠だろう。

 ホストタウンに名乗りを挙げた自治体の関係者をはじめ、活動に関心のある民間企業などが交流する場が2017年5月に立ち上がる。地域活性学会は17日、拓殖大学(東京都文京区)で「ホストタウンによる地域活性化シンポジウム」を開催する。シンポジウムでは基調講演としてスポーツ庁の鈴木大地長官などが登壇するほか、4つのテーマの分科会で参加者同士の議論や交流を深めることを目指す。

 シンポジウムを企画した地域活性学会の御園愼一郎副会長と、同学会スポーツ振興部会の福崎勝幸副代表幹事、分科会のテーマの1つ「パラリンピックから広がる地域の共生」でコーディネーターを務める拓殖大学 商学部の松橋崇史准教授の3人に、企画の背景や開催の狙いなどについて聞いた。
(聞き手は、高橋 史忠)

※「ホストタウンによる地域活性化シンポジウム」の詳細は、地域活性学会のサイトを参照。
左から拓殖大学の松橋准教授、地域活性学会の御園副会長(スポーツ振興部会会長)、同学会スポーツ振興部会の福崎副代表幹事。
左から拓殖大学の松橋准教授、地域活性学会の御園副会長(スポーツ振興部会会長)、同学会スポーツ振興部会の福崎副代表幹事。

2020年以降に継続できる取り組みが重要

―― まず、地域活性学会とスポーツの関係、今回のシンポジウム開催の背景を教えてください。

御園 地域活性学会は、地域活性化について学術的なアプローチで議論を深めるために2008年に設立され、現在600人の会員を擁しています。ひと言で地域活性化といっても定義が広いので、地方人材の育成のようなテーマから、温泉をテーマにしたものまで様々な部会が活動している学会です。

 その中で、スポーツによる地域活性化をテーマにした「スポーツ振興部会」を2011年に学会内に設けました。「総合型地域スポーツクラブ」や「スポーツ健康まちづくり」といったスポーツを通じた地域活性化の支援などに取り組んでいます。

 ただ、これまでのスポーツを通じたまちづくりは、いま一つ決め手に欠ける印象があったことは否めません。そうした中で東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、ホストタウン構想が出てきました。自治体の首長の期待は大きく、ホストタウンとして手を挙げたい。一方で、トップダウンで決まっても、実際に現場で動く自治体職員は「ホストタウンといっても、何に取り組めばいいか」という悩みを抱えている状況があります。

 地域活性学会としては、大会が開催される2020年まではもちろんですが、むしろそれ以降に継続していく取り組みが重要と考えています。地域活性化につながる活動をする中で、ホストタウンとして世界から訪日する人々とオリパラを楽しむ。そして、それをきっかけに2020年以降も人的交流や地域の文化発信などを続けるレガシーを残さなければなりません。

 例えば、ホストタウンとして海外のナショナルチームのキャンプ地を運営し、アスリートがやってきて、練習をして、メダルを取って帰る。そうした一時期のお祭り騒ぎだけで終わってしまってはもったいない。取り組みをポスト2020を見据えたまちづくりにつなげることが大切です。そうした活動を学会としてお手伝いし、機運を盛り上げる場としてシンポジウムを企画しました。