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スポーツ、世界への突破力

五輪開催5年前から準備、コカ・コーラの6ステップ

達人・高橋オリバー氏に聞く、スポーツマーケティングの要諦(中)

2017/04/06 05:00

上野 直彦=スポーツジャーナリスト

 「Coca-Cola」「Alibaba Group」「AtoS」「BRIDGESTONE」「Dow」「GE」…。

 IOC(国際オリンピック委員会)のパートナープログラムのウェブサイトを見ると「おやっ?」と感じることがある。アルファベット順に並んでいるはずの企業名の最初に「C」で始まる米コカ・コーラ社が鎮座しているのだ。

 今から約90年前の1928年アムステルダム五輪。米国で売り上げを急激に伸ばしていたコカ・コーラ社は、ブランドの存在を世界に広めるため、五輪史上初のスポンサーとなった。当時、五輪参加国は現在の4分の1である約50カ国だったが、まさに五輪を活用した企業のマーケティングや世界戦略が生まれた瞬間でもあった。IOCは最古参のパートナーに敬意を表して、どれだけ新規スポンサーが現れようとも、コカ・コーラ社をトップに表記するようになったといわれている。

 日本コカ・コーラで東京五輪に向けたスポンサーシップの取り組みを統括するオリバー高橋氏のインタビュー。リーボックやナイキ、FIFAなどで数々の実績を積み上げ、まさに「スポーツマーケティングの達人」の呼び名にふさわしい同氏のインタビューの第2回をお届けする。

(聞き手は、上野 直彦=スポーツジャーナリスト)
2020年に向けてコカ・コーラは動き出している(写真:加藤 康)

開催地決定から始まる6つのステップ

―― 五輪に向けたコカ・コーラ社の取り組みを教えてください。どのようなタイムスケジュールで取り組んでいるのですか。

高橋 開催年の5年(60カ月)ほど前から「6つのステップ」のタイムスケジュールで動き出します。

日本コカ・コーラが2020年東京五輪に向けて計画する6ステップのタイムスケジュール
ステップ160~48カ月前Discovery・開催地の決定
・オリンピックとは? その効果は?
・ホスト国としての役割?
ステップ248~36カ月前Assessment・レガシーの設定
・戦略、投資先の立案
・組織委員会との関係確立
ステップ336~18カ月前Planning・トップレベルから詳細まで
・各部門間の調整
ステップ418~3カ月前Execution/
Development
・IMCの実施(モーメンツ)
・プランの詳細最終決定
ステップ5GTまで3カ月Execution・We get one chance to do it right!
・オリンピック聖火リレー
・ベニューの設置および運営
・ホスピタリティー
・大会運営
ステップ6GTから3カ月Closing,
Measurement&
Learning
・クロージング
・デブリーフ
・次開催地へのナレッジ共有
※IMC(integrated marketing communication)=統合マーケティングコミュニケーション、ターゲットに統合的なメッセージでコンタクトし、コミュニケーションするマーケティング手法(プロセス)
※GT(game time)=大会が始まる時期 ※デブリーフ=活動における効果検証
(表:日本コカ・コーラの資料を基に筆者が作成)

 五輪では、大会が終わった後に取り組みについて検証するレビューを行い、何がうまくいったのか、何をもっと変えたほうがいいのか、次はどうするべきなのかを話し合います。そこで得た教訓を基に、次の五輪に向けて何をいつやるのがベストなのかを考えて確立されたのが6つのステップです。

 最初のステップは、開催地が決定してから大会開催の4年前までの「ディスカバリー」と呼ぶステップです。「決定した都市での五輪開催の意義」「開催都市や開催国にもたらされる経済効果」「コカ・コーラ社にもたらされる効果」などを把握するステップです。そして、ホスト国にあるコカ・コーラの現地法人の役割を理解します。

 大事なことは、五輪を決してお祭りで終わらせてはいけないということです。そのために最も重要なことは「レガシーの設定」です。最近、日本でもこの言葉をよく耳にするようになりましたが、どうも正しく理解されていないように感じます。

 第2ステップは、五輪開催の48~36カ月前の1年間をかけたレガシーの設定です。まさに今ですね。「日本コカ・コーラとして2020年東京五輪のレガシーを確立し、社内で共有して、みんながそれに向かって進んでいきましょう」というコミュニケーションに取り組むことが今年(2017年)の僕の課題でもあります。

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