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スポーツ、世界への突破力

コカ・コーラは、なぜスポーツビジネスに強いのか

達人・高橋オリバー氏に聞く、スポーツマーケティングの要諦(上)

2017/04/04 05:00

上野 直彦=スポーツジャーナリスト

 スポーツビジネスの取材を続けていると、関係者から必ず出てくる名前がある。

 オリバー高橋――。FIFA(国際サッカー連盟)のスポンサーマーケティングで、ナイキのユースプログラムで、スイス・ローザンヌの取材で。ときにビジネスのビッグディールを決めた話であり、ときには仕事上の筋の通った武勇伝である。共通することは“スポーツマーケティングの達人”であるということだ。これ以外の評価を聞いたことがない。

 日本コカ・コーラは東京五輪を迎えるに当たり「チーム TOKYO2020 オリンピック」を立ち上げた。そのチームリーダーとして、米国アトランタにあるコカ・コーラ本社が抜擢したのが高橋氏だ。スポーツビジネスの世界では、その名前を知らない人間はいないが、日本のメディアでは、ほぼ初めての登場となった。

 どういう人物で、何を目指し、何をミッションしているのだろうか。予定時間をはるかに超えたインタビューで、その全てを語ってもらった。

(聞き手は、上野 直彦=スポーツジャーナリスト)
高橋オリバー氏。日本コカ・コーラのオフィスで。コカ・コーラのロゴは、ボトルの王冠で描かれている(写真:加藤 康)
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「Keep in the loop!」の重要性

―― インタビューでは、普段通りオリバーさんと呼ばせてください。オリバーさんは、これまでリーボックジャパン、FIFA、ナイキジャパンと歩んできて、現在は日本コカ・コーラで五輪のマーケティングを担当しています。スポーツビジネスの世界に入った理由と、日本コカ・コーラに入社した経緯を教えてください。

高橋 僕は、まさに「スポーツ」という家庭環境の中で育ちました。父が日本人、母がドイツ人なのですが、父親はドイツのケルンにあるスポーツ大学で柔道を教えていました。そこで母親と知り合い、僕が生まれ、4歳の時に日本に帰ってきたんです。僕自身はずっと水泳をやっていました。

 高校を卒業した後にオーストラリアに行き、帰国して22歳の時にリーボックジャパンに勤めました。プロダクト、マーケティング、PR、社長室と、スポーツマーケティングの業務は全て担当しました。会社の方針としてスポーツからファッションに移行するという時に、ちょうど東京でスイスISL(International Sports and Leisure)社の日本オフィスの立ち上げがあり、運良く一緒にやらないかというお話をいただき、2000年5月にISLに入社しました。

 2002年のサッカーの日韓ワールドカップ(W杯)が終わり、FIFAで働くことが決まりチューリッヒに行きました。その後、2012年5月に帰国してナイキジャパンに入りました。FIFA時代にずっとスポンサー関連の仕事をしていたのでコカ・コーラとはご縁があって、2020年の東京五輪に向けて関連の人材を探しているという話をいただき、現在お世話になっています。

―― FIFAでは、どういうお仕事を。

高橋 「マーケティング・アライアンス&イベントオペレーション・ヘッド」という部署で、FIFAパートナーやW杯スポンサーなど20社くらいを担当していました。業務は、スポンサーに販売した権利のインプリメンテーションです。女子のW杯や、U-20、U-17、フットサルW杯、ビーチサッカーW杯なども含めて、10年くらいFIFAに在籍していました。

―― 今回、オリバーさんがコカ・コーラ社に推薦されたのは、アトランタの本社の担当者が元FIFAに在籍していたことがきっかけだったと聞きました。

高橋 ええ。アンバー・スティールというとても優秀な女性で、FIFA時代に私の最初の上司でした。現在はコカ・コーラ社の米国本社でオリンピック関連を担当しています。ですから、昔の上下関係が再現されたような感じですね。

―― スポーツビジネスに携わる際に、大事な要素として「Keep in the loop」(ループの中にいろ)という言葉を聞きます。どこにいても、スポーツビジネスの仲間たちとつながりを持ち続けるという意味だと思いますが、今回もまさにそういったつながりということですね。

高橋 そうです。2020年の東京五輪についていうと、2002年の日韓W杯を通して一緒に仕事をさせていただいた方が、かなりスポーツビジネスに戻ってきているように思います。スポンサーサイドも、組織委員会もそうです。先日、組織委員会からスポーツマーケティングの話をしてくださいと依頼をいただいて伺ったら、部屋にいた半分くらいの人が「あれ、今は何をやっているんですか?」と、顔見知りでした(笑)。

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