アスリートのための総合トレーニングセンターを沖縄で実現すべく動き出した元プロラグビー選手の福永昇三氏。柔道家・野村忠宏氏をはじめ、日本を代表するトップアスリートとともに立ち上げた企業「アスリートアイランド」を中心に、2016年には具体的なプロジェクトが進行形になっている。

 2015年11月、元プロラグビー選手の福永昇三氏はニュージーランドに赴いた。同国のカンタベリー地域のラグビー協会と、指導者講習などの交流活動についての話をするためだ。

 同年にイングランドで開催されたラグビーワールドカップ(W杯)で史上初の連覇を成し遂げたニュージーランド代表「オールブラックス」。カンタベリー協会は、そのメンバーにも数多くの選手を輩出している。加えて、ラグビー留学やトレーニングのメッカでもある。まさに世界のトップ・オブ・トップとして、世界ラグビーをけん引していると言って過言ではない。

アスリートアイランド 代表取締役の福永昇三氏 (写真:加藤 康)
アスリートアイランド 代表取締役の福永昇三氏 (写真:加藤 康)
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 福永氏とニュージーランド・ラグビーは、以前より浅からぬ縁があった。初代キャプテンとして福永氏が活躍したラグビートップリーグの「三洋電機(現・パナソニック)ワイルドナイツ」には、ニュージーランド出身の選手が多くいた。今なお続く、チームメートとの交流は福永氏の大きな財産の一つだ。

 2011年2月22日(現地時間)、カンタベリー地方で大震災が発生した。くしくも東日本大震災の数週間前の出来事だ。震災で多くの施設を失ってしまったカンタベリー地方では、人材を残すためのコーチング研修が2013年から始まった。カンタベリー地方に人やチームを格安で世界中から招待したのだ。福永氏も招待状を受け取り、超一流のコーチ陣から最高のもてなしを受けた。もちろん、世界最高レベルのラグビーの指導法とともに。

 「以前からカンタベリー協会のコーチングのカリキュラムは、ズバ抜けて優れていると感じていた」と、福永氏は現役時代に感じた同協会ヘの印象を振り返る。

日本とニュージーランドのラグビーをつなぐ架け橋に

 福永氏は、カンタベリー協会から指導者の派遣を受け、指導者講習会を日本で開催する活動に取り組んでいる。日本とニュージーランドのラグビーをつなぐ架け橋になりたいという強い思いがあるからだ。

 こうした取り組みは、福永氏が柔道家の野村忠宏氏らと2015年に立ち上げたベンチャー企業「アスリートアイランド」の活動の一つだ。福永氏は、アスリートのための総合トレーニングセンター「スーパートレーニングセンター」構想を掲げ、同社でその実現に向けて取り組んでいる。

 カンタベリー協会が交流相手として大手のスポーツ関連企業などではなく、設立されたばかりのアスリートアイランドを選んだというのは、福永氏と同協会の絆の強さを感じさせる。

 いずれは指導者講習会だけではなく、ニュージーランドへのラグビー留学や、現地での合宿などにも取り組んでいきたいと福永氏は考えている。自分自身のニュージーランドへのラグビー留学などの経験から、「若い選手が早いうちに世界を知ることは大切で、そのためのサポートをしていきたい」と話す。