日本で唯一、国際オリンピック委員会(IOC)公認のオリンピック教育が行われているスポーツマネジメント大学院「つくば国際スポーツアカデミー」(TIAS、Tsukuba International Academy for Sport Studies)。今回はTIASアカデミー長の真田久氏(筑波大学 体育専門学群長)と、同副アカデミー長の清水諭氏(筑波大学 体育系 教授)へのインタビューの後編。TIASが持つポテンシャルと、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの「レガシー」となるスポーツ界のグローバル人材を生み出すヒントを聞いた。
(聞き手は、上野直彦=スポーツジャーナリスト)
TIASの学生と教員。国際色豊かだ。(写真:加藤 康)
TIASの学生と教員。国際色豊かだ。(写真:加藤 康)

筑波大学とIOCの深い絆

―― IOCと筑波大学は、どんな関係にあるのでしょうか。

清水 筑波大学はIOC公認のオリンピック教育プラットフォーム(CORE)を日本の大学で唯一持っています。その関係で2016年10月にはIOCの教育チームによる「オリンピック価値教育プログラム」(OVEP、The Olympic Values Education Programme)のワークショップを開催しました。10月20日には、トーマス・バッハIOC会長の来日記念特別式典も開いています。

※ OVEPは、IOCが掲げるオリンピックの理念を、スポーツ・身体活動を含めた教育活動を通じて若い世代に伝えることを目指すプログラムの総称。TIASでは、IPCが掲げる理念も踏まえてプログラムを展開している。

 TIASでは、IOCや国際競技連盟(IF)からディレクタークラスのゲスト講師が来日して講義をしています。世界から集まった学生にも、前職でIFや各国オリンピック委員会(NOC)に勤めていた人たちがいて、スポーツ関連の人材が世界から1カ所に集結するという大きな力が働いています。

真田 TIASの1つの目的として、いわゆる「ローザンヌネットワーク」に入っていきたいと考えているんです。スイスのローザンヌにはIOCやIFが集まっていて、その人的なつながりはローザンヌネットワークと呼ばれています。もちろん筑波大学オリジナルの人材ネットワークもあるのですが、それにプラスして世界のスポーツ界の大半を動かしている「ローザンヌネットワーク」と連携できれば、効果は大きいと思います。最終的にTIASからローザンヌのIFやIOCを「就職先」として、人材を送りたいですね。

清水 2020年の東京オリンピック・パラリンピックと、同じ年にローザンヌで開催されるユースオリンピック冬季競技大会と連携しようという動きもありますし、スイスのオリンピック・チームが事前合宿で筑波大学にやって来るといったスイスオリンピック委員会と筑波大学との連携にも発展しています。

次世代への新しい動き、欧州のスポーツ大学院との連携

―― TIASは、欧州を代表するスポーツマネジメント大学院プログラム「MESGO」(The Executive Master in European Sport Governance)や、オランダのユトレヒト大学とも提携していますが、その狙いは。

清水 MESGOは欧州サッカー連盟(UEFA)が中心となって運営するスポーツマネジメント大学院です。TIASとMESGOが連携する目的は、国際的なスポーツイベントを運営するIOCや国際サッカー連盟(FIFA)などの組織で活躍できる人材を日本から育てるためです。国際スポーツの現場のマネジメントで活躍できるグローバル人材をTIASで育て、国際スポーツ組織で働いてもらう。そのためには、スポーツマネジメントを国際的な視点で学べる環境が必要です。TIASでは、スポーツ界におけるグローバル人材の育成に最も力を入れています。

 ユトレヒト大学とは国際交流協定を締結し、グローバル・スポーツ・プログラムを今年からつくる予定です。現在、計画が進んでいるのは4大学での連携ですね。ユトレヒト大学と筑波大学、南アフリカ、ブラジルの大学です。各大学から5人を選出し、合わせて20人が4週間ずつ各国を回って教育を受け、資格が授与されるというプログラムをユトレヒト大学の教授が考案しました。大規模な教育プログラムで、スポーツマネジメントやスポーツによる貢献活動も含めたグローバル・スポーツ・プログラムを展開しようというプランなんです。