ウエアラブル機器に勝機があるとみて、さまざまな企業が、多彩な製品を投入している。ただ、決定打はなく携帯性や使い勝手の面で課題が残る。身に着ける(ウエアラブル)という機器性質上、どうしても大きさや重量に制限があり、容量の大きな2次電池を搭載出来ないからだ。本連載では、特に、ウエアラブル機器の消費電力に焦点を当て、注目製品を解析する。第1回となる今回は、心拍測定用の電極を服の中に組み込んだゴールドウインの「C3fit IN-pulse(インパルス)」だ。

 繊維に電極を埋め込んで、着るだけで心拍数の取得ができる――。これを実現できる機能性素材が、2014年に東レとNTT、NTTドコモが共同開発し、発表した「hitoe注1)」。この新素材を組み込んだ初の製品であるゴールドウイン のスポーツウエア「C3fit IN-pulse(インパルス)」を今回の解析のターゲットとした(図1)。

注1)高導電性樹脂を特殊コーティングすることで耐久性に優れ、生体信号を高感度に検出できる機能素材。心拍・心電情報を連続的に計測することができる。配線もウェアに一体化されて機能集約されており、洗濯して繰り返し利用できる。
図1 C3fit IN-pulseのシステム全体像
[画像のクリックで拡大表示]

 同製品には胸の部分にスナップボタンで接続する箇所があり、ここに付属の「hitoeトランスミッター」と呼ぶ電子機器を接続して使う。トランスミッターはBluetooth Low Energyの無線機となっており、これを使ってスマートフォンに心拍数を転送することができる。C3fit IN-pulse自体は防水(IPX5/7)対応のため、汗をかくようなトレーニング時にも利用可能である。トランスミッターの充電は背面の目隠しカバーを外したところにあるMicroUSBコネクターで行う。

 スマートフォンとの連携は、NTTドコモが提供するアプリ「Runtastic for docomo」で行う。Runtastic for docomoを継続的に使うには月額350円が必要である。表1にhitoeトランスミッターの仕様を載せる。

表1 hitoe トランスミッター01 公開スペック
[画像のクリックで拡大表示]

 ここで興味深いのが、トランスミッターで取得できるデータと、Runtastic for docomoで活用しているデータに差異があることだ。トランスミッターの仕様には心拍数、加速度、心電位が取得できるとある。しかし、Runtastic for docomoは製品を評価した時点(2015年3月)では、心拍数のみに対応している。今後は加速度、心電位を利用したサービスへの対応があるのかもしれない。

 さらに、トランスミッター自体にはメモリー機能があり、スマートフォンと常時連携しないでも単体で計測データを記録できる。しかし、Runtastic for docomoはリアルタイムの計測を要求している。この辺も今後改善される可能性がある。