製造業向けのコンサルティングを展開するO2(本社東京)と人工知能(AI)を使ったデータ解析を手掛けるFRONTEOは、熟練技術者・技能者の暗黙知やノウハウの伝承を支援するシステムを開発した。O2の持つ技能伝承手法をツール化した上でFRONTEOのAIエンジン「KIBIT」の機能を組み込んだもので、O2が技能伝承ソリューション「ORINAS」として提供を始めた(ニュースリリース)。

 具体的には、次のようなプロセスで思考をシステム化する。まず、O2が技術者・技能者へのヒアリングを基に、同社の「構造化設計手法」(DSM)を用いてベテランの思考プロセスをマトリックスとして整理する。さらにそれをO2が考案した「Brain Model」と呼ぶ独自のネットワーク図として可視化する。そこから得られた知見や思考プロセスをKIBITに教師データとして教え込むことで、企業ごとのナレッジAI検索システムを構築する。

「ORINAS」による思考のシステム化
「ORINAS」による思考のシステム化

 ORINASは、AIを用いることで、ユーザーが求める情報を高い精度で提示する。企業において伝承が難しいとされる計画・企画や設計などの業務に利用することを想定しており、調べたい内容に関連する文書や記録を効率的に探し出せるようになるため、ジョブローテーションの活性化や若手への業務移管、人材活用などを促進できるとしている。

 製造業に限らず、農業やスポーツ科学、ゲーム開発といった製造業以外の分野での活用も進める。既にそうした分野での試用検証や機能開発を進めており、「多方面で『ベテラン思考の活用』を支援できるサービスとなる」(O2)という。両社は、最終的には業界ごとの固有の問題を解決できるような思考システムを創り上げることを目指している。