日本体操協会と富士通、富士通研究所(本社川崎市)は、体操競技での採点支援技術とシステムの開発に向け、共同研究を進めると発表した。競技者の動きを認識して技の種類と難度を検出し、自動的に採点する。選手の育成支援と、大会開催時の審判の補助に、2020年東京五輪での採用を目指す。

図1 体操選手の演技を自動で採点した様子
図1 体操選手の演技を自動で採点した様子
システムの完成イメージとして富士通が示した。
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 システムは、富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーを応用して開発する。この3Dレーザーセンサーはレーザーパルスを投射し、物体で反射して戻ってくるまでの時間を測定して距離を得るセンサー。1フレーム当たり7万6800点について、毎秒30回の測定ができる。これで演技中の体操選手を捉え、選手の骨格の動きを抽出することによって、選手がどのような技を実行したかを判定する。複数のカメラで対象を撮影して3D位置を検出するモーションキャプチャーと異なり、選手はマーカーを身につける必要がない。選手に負担のない状態で、リアルタイムで選手の頭や肩の位置、ひじやひざの関節の曲がり方のデータを得られる。

 3Dレーザーセンサーで得た距離データから骨格の動きを抽出する処理は、これまで処理スピードと精度を両立するのが難しかった。具体的には、大量データを基に機械学習したモデルで高速に認識処理ができる「モデル方式」では精度が不十分で、3Dデータに骨格を当てはめる「フィッティング方式」では精度は十分だが処理に時間がかかった。新たに開発した方式では、「モデル方式」を選手の手足部分の認識に使い、モデル方式を適用しにくい体幹部分には「フィッティング方式」を使うことで、処理スピードと精度の両立を図った。

図2 骨格の認識技術
図2 骨格の認識技術
認識した骨格の動きによって技の種類を判断する。
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 さらに、既存のレーザーセンサーは選手までの距離が遠くなると解像度が低くなる(選手の位置に当たる測定点が減る)欠点があった。新システム向けには、検出距離が長いときにレーザーパルスの投射点の範囲を自動的に絞る“望遠”機能を付ける。