女子バスケットボール選手の着地動作分析

 バスケットボールは下肢による着地や切り返しが多く、膝や足首の障害が多発する競技である。特に女性選手は膝の前十字靱帯損傷の発生率が高く、男性選手の約3倍に及ぶといわれる。この障害は、着地や切り返し時の不具合な動作による膝への過度な外力により引き起こされるとされるが、詳細は解明されていない。そこで競技中よく観察される内側片脚着地を試行させ、その成功試技(Success Task=ST)と不具合な動作が見られた失敗試技(Failure Task=FT)を比較し、FTに含まれる負荷を分析した。

 具体的には、女子バスケットボール選手43名に内側片脚着地を試行させ、その動作をモーション・キャプチャー・システムで撮影。着地後に3秒間完全静止できた試技をSTとし、それが3回観測されるまで繰り返した。一方、完全には静止できなかった試技をFTとした。膝への負荷は逆動力学法で算出した。FTは17名で観測され、特に骨盤側屈と膝外反、股内旋が観測されたFTは、STに比べ膝に過度な負荷が生じていた。

 この不具合な動作を防ぐ対策の1つとして、着地前の空中での良好な姿勢の保持を考え、そのトレーニング法を検討している。

 筆者らは、不幸にも膝への障害を引き起こした選手の支援用具である膝装具の保護機能も評価しているが、生活動作レベルでは保護機能が発揮される一方、スポーツ動作レベルでは保護機能が見られない。今回の結果を踏まえた機能を膝装具や他用具に組み込み、保護機能を評価していきたい。

バドミントン競技の動作分析

 バドミントン競技はシャトルを正確に打つラケットワーク技術に加え、打ち返されたシャトルを拾い上げるフットワーク能力も必要である。多発する障害は、前十字靱帯損傷・足首捻挫などの下肢関節障害や、野球の投球障害と同じ肩・肘関節障害である。前者の原因として考えられるのは、シャトルを打つ・拾い上げる際の不具合な体勢での着地から生じる、下肢への過度な負荷である。後者は未熟なラケットワーク技術やスイング量の過多、また能力に見合わないラケットの使用も可能性としては考えられる。

 まず前者の要因を検討するため、シャトルを拾い上げる動作を測定し下肢にかかる負荷を分析した。対象は男子高校生選手8名とし、規定の位置に落とすシャトルを指定された場所から踏み込んでラケットで拾い上げさせた。この動作をモーション・キャプチャー・システムで撮影し、下肢にかかる負荷を動力学的に分析した。

 踏み込み脚の接地時間は0.524秒であり、その間で身体に急激なブレーキをかけて正確なラケットワークを成し遂げるため、股・膝の屈曲・内転・内反モーメントで下半身の安定性を保っていた。踏み込み脚の膝には大きな前方剪断力が作用しており、障害予防のため膝関節周辺の筋力増強が不可欠だった。また踏み込み脚足裏の足圧中心が足外側に集中しており、身体の安定性維持にはシューズ外側のグリップ力が重要なことも分かった。

 現在は成長期選手のスマッシュ動作の分析を続けており、その動作の特徴から成長期選手に適したラケットを開発できるよう、メーカーと試行錯誤を進めている。