パナソニックは、スタジアムなどの限られた領域内で、Wi-Fiを利用して複数の動画を同時に配信する「マルチ動画配信システム」を商用化を目指している。

 スポーツの競技会場で、さまざまな角度から撮影したライブ映像やプレーの解説動画などを、会場内の観客のスマートフォンやタブレット端末に配信する。運用コストは2万人規模のスタジアムで1試合につき数百万円。ゴルフや自動車レースなどの会場が広いスポーツや、陸上や体操など複数の競技が同時進行するスポーツでの活用を見込む。

「マルチ動画配信システム」は複数のスマートフォンやタブレット端末に、動画を同時に配信する
「マルチ動画配信システム」は複数のスマートフォンやタブレット端末に、動画を同時に配信する
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アプリ側がサーバーにアクセスする回数を減らす

 スマートフォン用のアプリに配信する場合、必要な帯域は1チャネル当たり1.5Mビット/秒。今回のシステムは、最大で8チャネルを配信でき、その場合は12Mビット/秒となる。通信の負荷を軽減するため、配信にはマルチキャスト方式を用いる。加えて、スマートフォンのアプリが配信データを保存する仕組みを持つことで、アプリ側がサーバーにアクセスする回数を減らしている。

 サーバーやWiFi設備を持たない施設や会場での利用を想定して、サーバーを設置するラックには、持ち運びしやすいトランク型(容積が60リットル程度の中型スーツケースの大きさ)を用意した。仮設のアンテナなどと組み合わせてサービスを提供できる。

マルチ動画配信システムで利用するサーバーラック。トランク型で持ち運びやすい
マルチ動画配信システムで利用するサーバーラック。トランク型で持ち運びやすい
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 同システムを開発したのは、モバイル端末向けの動画配信を手掛けるフランスのスタートアップ企業VOGO社。パナソニックは、同社の子会社を通じて、同システムの日本市場での独占販売契約を締結した。「VOGO社はこの技術に関して7件の重要な特許持っている。パナソニックで同様のシステムを開発した場合、特許に抵触してしまうため、独占販売契約を結んだ」(パナソニック)。

* パナソニックとVOGO社の提携についての発表資料はこちら

 パナソニックは、2016年12月に秩父宮ラグビー場で開催された「ジャパンラグビートップリーグ」の試合で同システムを用いた実証実験を実施した。2017年度前半での商用化を目指す。