古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 前回(第1回)は、管理者が管理者としての仕事ができていない理由をテーマに掲げた。そして、そのうちの1つとして「管理者としての役割をきちんと認識できていないために、適切な仕事の配分(組織としての適切な分業化)ができていない」という理由を取り上げ、問題点や対応策を解説した。限られた時間と労力の中で日々の仕事に追われながら管理者としての仕事をすることは、現実にはかなり難しい仕事だろう。しかし、管理者として常に自分と自分が所管する業務の棚卸をしておくことは、管理者に求められる基本のスキルだと考えてほしい。

強い工場づくりのポイント

 今回は、管理者が「管理者としての目線を持つこと」および「管理者の立ち位置」をテーマに話をしたい。なぜなら、時として管理者が担当者の目線に偏ってしまい、管理者として本来すべきことや言うべきことができていないという話をよく耳にするからだ。

「あるある」事例

 どの工場でも重要な取り組み課題として挙げられるものに、在庫の圧縮がある。例えば、資材部門では生産現場に原材料を適切に供給するために、日々調達に苦労している。刻々と変わるクライアントの要望に応えるために、材料を緊急手配したり納期を前倒ししたりすることなどは日常茶飯事だ。なかなか思い通りにならない調達先をさまざまな交渉テクニックを駆使しながらコントロールしていく。その苦労は並大抵のものではない。それでも、調達できて「当たり前」。調達が遅れて欠品が発生すると、生産現場や営業部門からは猛烈な抗議を受ける。

 こうした切迫した状況下で資材部門の担当者ができることといえば、在庫を持って対応することくらいしかない。需要がどう変わろうとも対応できるように、先行して手配したり、受注できないリスクを考えて発注したりすることなどだ。「営業の見通し精度を上げてほしい」「工場はトラブルを減らして生産計画通りにものを造れるようにしてほしい」。資材部門の担当者にそうした思いがあっても、社内のパワーバランスには逆らえず、ただひたすら調達の達成に邁進するしかない。

 こうして欠品を起こさないように努めたにもかかわらず、経営陣からは無情にも「在庫が増えている。何をしているのだ!」と厳しい叱責を受けてしまう。まさに板挟み状態だ。