古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
[画像のクリックで拡大表示]
古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)

 今、「工場の現場力が落ちているのではないか」という声が、業種を問わず、多くの日本企業から上がっている。「最近の若い連中は…」というお決まりの言葉で、幹部やベテランが、現場を切り盛りしている中堅や若手の実力の低下を嘆くことも珍しくない。しかし、本当の原因は中堅や若手の能力が低いからではない。私は、ものづくりをする企業の経営理念や管理の基本、QCDの基本とすべき考え方が、ベテラン層から中堅や若手世代に十分伝わっていないことに大きな原因があると思っている。

 さらに原因を探れば、基本的な考え方をきちんと教育しないまま、OJT(On the Job Training)の名の下に見よう見まねでスキルを高めていくことを中堅や若手に求めてきたことなども考えられる。現場の人員削減や教育訓練に掛ける予算の削減など、どの企業にもいろいろ事情はあるだろう。だが今、そのつけがボディブローのように効いてきている。こういった問題を解決する一助になることを願い、本コラムでは、強い工場をつくるための基本について書いていきたい。特に管理者が知っておくべきポイントを「マネジメント」と「ものづくり」、「QCD」の各視点から解説していく。

 なお、ここで1つ言っておきたいことがある。最近耳にするようになった、製造部門を軽んじるかのような論調についてだ。内閣府が発表している平成26年(2014年)度国内総生産(GDP)統計によると、日本のGDPの74.0%は小売り・金融・運輸・サービスなどの第三次産業で生み出されている一方、鉱業・製造業などの第二次産業は24.9%にとどまっている。このような背景から「日本はものづくり立国からサービス立国を目指すべきではないか」といった論調があり、製造業の中ですら製造部門が軽視される風潮が最近になって出てきている。だが、その論調は正しくない。「もの」がなければ小売りもサービスも成り立たないからだ。つまり、製造現場における「ものづくりの力」は企業の生命線なのである。強い工場を実現する「人づくり」を欠いて、企業は存続し得ないと言っても過言ではない。