古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 工場にいると、製造部門と営業部門との言い争いを目の当たりにすることがある。製造部門側が「あんな営業のやり方をしていたら、コスト(原価)が上がるだけだ」とコストのことを考えずに受注に走る営業部門を批判する場面がある。一方で、営業部門側は「売れるから受注しているのに、製造部門は自分の都合だけを考えて、会社のことを考えていないじゃないか」と応酬する場面がある。このような部門間の衝突について身に覚えのある人も多いだろう。

 しかし残念ながら、こうした衝突で見られるような製造部門や営業部門の主張は、多くの場合、どちらの意見も物事を片面からしか見ていない。工場の管理者としては、製造部門か営業部門かという観点ではなく、会社の利益を最大化するために、工場と営業の業務をうまく整合させることが求められる。それが今回の主題である「売り方と造り方を連動させる」ということだ。

強い工場づくりのポイント

 「売り方と造り方を連動させる」とは、各部門が自部門の機能を最大化するために部分最適にしないことを意味する。例えば、営業部門は単に受注した製品の生産を製造部門に命じるだけではダメだ。一方で、製造部門は単に生産指示があったものを忠実に生産するだけではダメなのだ。営業部門は、製造部門がいかにQCDを最適化できるかを考慮して受注活動を行うべきであり、製造部門は、営業部門がいかに販売の機会損失をなくせるかを考慮して生産活動を行うべきである。

 だが、「売り方と造り方を連動させる」のは、営業部門と製造部門が密にコミュニケーションを取ることだけを意味するのではない。会社として利益の最大化や、全体視点での効率の最適化を実現するために、販売計画と生産計画を連動させることも含む。販売計画と生産計画の連動とは、その会社の経営戦略と、それを各部門に落とし込んだ販売戦略や生産戦略との間の整合を取らなければならない。これらの一連の関係がきちんとつながってこそ、会社として利益の最大化を狙えるのだ。