古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 作業者教育にはポイントがある。作業を行う上で注意しなければならないポイントや注意点、作業上のコストなどを明確にした上で教育することだ。加えて、教育を行った後に、作業者が本当にその内容を理解(腹落ち)したかどうかを確認することである。では、作業を修得してしまえば、以降はずっとそのまま作業を続けるだけでよいのだろうか。実は、必ずしもそうではない。

 定まった動作の作業であれば、1度覚えてしまえば作業内容や質は大きく変わることはないだろう。だが、判断を要する作業、例えば検査工程や、作業の結果や仕上がりの良否を一定の基準で見極めなければならない工程などでは、作業に従事しているうちに徐々に判断の基準(感覚)がずれてくることがある。作業者自身は正しい作業を行っているつもりでも、実際には判断が甘くなっていたり、逆に厳しくなっていたりするケースがみられるのだ。加えて、複雑な作業を行っている場合も、時間の経過とともに作業が変わってしまう可能性がある。例えば、作業者が作業に慣れることにより、教えられた作業手順を省略したり自分なりに手を加えたりすることだ。すると、いつのまにか正しい作業からかけ離れてしまうことがあるのだ。

強い工場づくりのポイント

 まず、工場の管理者は、人が行う作業は時間の経過とともに変わる可能性があるということを認識してほしい。これは、作業者が経験豊富なベテランであっても、経験の浅い新人であっても同様だ。そのため、工場の管理者は作業者に対し、作業に対する力量や作業手順などを定期的に確認する必要がある。

 既に作業認定を行ったのに、定期的に習得状況を確認することは作業者に対して失礼ではないかと考える人もいるだろう。特に、工場管理者よりも年長の作業者に対してはそうした傾向が強くなるものだ。あるいは、教育・訓練で作業認定を行ったのだから、わざわざできていることをもう1度再確認するのは時間のムダではないかと思う人もいるかもしれない。

 しかし、先に述べた通り、作業者の作業内容は時間の経過とともに変わる可能性があるのだ。従って、作業者が常に正しい作業を確実に行っているかどうかを定期的に確認し、必要に応じて作業者のスキルを維持していくことは、管理者としての重要な責務だと心得てほしい。