古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=株式会社ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 品質を確保する上で極めて重要な役割を果たすはずのQC工程図が、現実には十分に活用されていない。むしろ、QC工程図に懐疑的、あるいは否定的な意見が生産現場に根強く残っている。そう前回のコラムで紹介した。

 うまく活用されていない原因として、[1]QC工程図の意味が十分に理解されていなかった、[2]会社の状況に応じた運用方法ができていなかった、という2点を挙げた。QC工程図が十分に理解されずに、懐疑的、否定的な意見が多い背景には、QC工程図を作成しても品質はそれほど良くならないという「実体験」に基づく感想が根底にあるからだろう。

 前回、QC工程図の意味とQC工程図を有効に機能させるために何をすべきかを解説した。しかし、QC工程図はそれなりに役に立つと理解してはいるものの、QC工程図を文書として作成するのは面倒で時間がかかるという、これまた「実体験」に基づくネガティブなイメージがあることも事実だ。では、QC工程図を活用する際の面倒をどう解決すればよいのだろうか?

強い工場づくりのポイント

 まず前提条件を明確にしておこう。QC工程図が取り引きの中で必須とされている業界や、社内の品質マネジメントシステムでQC工程図の運用を義務付けている会社、QC工程図を作成運用する際に必要な人材が手当てできる会社は、当然、きちんとQC工程図を活用しなければならない。

 本コラムでは、QC工程図の考え方を理解しつつも、限られた時間と人材の中で、どのようにすればよいのかと悩みを抱えている会社を念頭に話を進めていく。限られた時間や限られた人材の中で、QC工程図の機能を十分に享受できる運用は、「俯瞰的な視点での運用」と「メリハリをつけた運用」の2つだ。

 俯瞰的な視点での運用とは、多品種で多様な製品の細かな相違点に目を向け過ぎるのではなく、プロセスの基本的な注意点に着目してQC工程図を作成することだ。一方、メリハリをつけた運用とは、さまざまな制約によって全品種全工程に展開ができない場合でも、「何もしない」のではなく、せめて特定の製品や工程に着目してQC工程図の考え方を少しでも展開しようとすることである。有効なツールを、できない理由を挙げて活用しないのではなく、「有効に活用すること」ありきで、どうしたらQC工程図を作成できるのかを考えることが工場をマネジメントする人の役割だと心得てほしい。