古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 品質を確保するためには、生産に関わる4M〔人(Man)と設備(Machine)、材料(Material)、そして方法(Method)〕のばらつきを抑え込むことが重要だ。そのための具体的な手法として、QC工程図や作業標準書、そして教育訓練の考え方が有効である──。前回のコラムでこう解説した。だが、本当に「QC工程図」や「作業標準書」、「教育訓練」を有効に活用しているだろうか。これらはISOなどの品質マネジメントシステムを導入している会社では聞きなじんだ言葉だが、実は有効活用していると言えるところは少ない。

 そもそも、QC工程図や作業標準書(それに類するものも含めて)が工場の中に存在していない会社や、部分的にしか存在していない会社もある。筆者の感覚では、中小規模の企業では、むしろQC工程図などが存在しない会社の方が圧倒的に多いように感じる。(筆者注:ただし、業種・業界に大きく依存する。自動車や電機業界では規模によらず活用している会社が多いようだ。)

 これらの手法は多くの書籍で紹介され、品質関係の講習などでも必ず語られるものだ。なぜ、それほど普及していないのだろうか?

強い工場づくりのポイント

 製造品質を確保するための手法として、ここではQC工程図を採り上げよう。本コラムは工場マネジメントにおける、工場力強化を主眼としている。従って、QC工程図の詳細な解説は他書に譲り、QC工程図の定義だけを抜き出してみる。

 日本品質管理学会が示すQC工程図の定義はこうだ。「製品・サービスの生産・提供に関する一連のプロセスを図表に表し、このプロセスの流れにそってプロセスの各段階で、誰が、いつ、どこで、何を、どのように管理したらよいかを一覧にまとめたもの」。

 ところが、実際に各企業で使われているQC工程図を見ると、作業を順番通りに羅列した「工程フロー図」程度のものや、測定や検査が必要な場合に管理項目として「○○寸法測定」などと記載した程度のもの、帳票類やチェックシートなどへの記入があるような場合に「チェックシート記入」などと記した程度のものであることが多い。

 前回のコラムを思い出してほしい。「QC工程図は、各工程で品質がばらつかないように、何に注意をすべきなのか、何が作業上のポイントなのかを明確にする。その上で、必要な管理項目を、どのようにして管理するのか具体的な内容と共に明文化したものだ」。つまり、何を管理項目とすべきかという内容そのものが、QC工程図が有効に機能するか否かの鍵なのである。