古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 生産工程で徹底した「ムダ・ロスの削減」をいくら行っても、品質が悪ければそこに新たなムダ・ロスが発生してしまう。ムダ・ロス削減の取り組みをやり続けることは強い工場にとって必要不可欠なことだ。だが、もともとの品質の悪さを、工場の改善活動で補完するということはあってはならない。

 品質問題が発生したときに、総力を挙げて対策に取り組むことはどの工場でも行われている。しかし、そもそも品質問題が発生しないものづくりに向けた取り組みが十分に機能していると、自信を持って言い切れる工場は少ないだろう。

 「我が社は生産工程での品質問題の解決に精力的に取り組んでいる」と、活発な改善活動を行っている気になって満足していないだろうか。現実に行っていることは、発生してしまった品質問題に対する改善の取り組みであり、そもそもにおいて品質問題を発生させないような取り組みには至っていない、と多くの生産現場を見て感じる。

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強い工場づくりのポイント

 品質問題はなぜ発生するのかという問い掛けは、漠然としている。従って、ここでは工場での品質問題、すなわち製造品質に焦点を当ててみよう。

 少々乱暴な言い方だが、工場で品質問題が発生する原因を一言で言うならば、「生産に関わ『4M』にばらつきが生じた」からだ。製造業に従事する人にとって4Mは極めて一般的な用語だと思う。生産に関わる4つの要素、人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、そして方法(Method)のことだ。それぞれの頭文字が「M」なので4Mと称している。

 生産工程で生産したときに、あるものは「良品」、あるものは「不良品」となった場合、両者の違いは生産の4Mのいずれかがばらついたことによるものと考えられる。同一人物が、誤差が出ない設備と、特性の違いがない材料を使い、同じ作業方法で生産すれば、出来上がったものは全く同じになるはずである。4Mの条件が良品を造ることに適切な内容であれば、4Mに寸分の違いがなければ、100%良品が出来るはずだ。

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 しかし現実には、人は同じではないし、設備や材料には誤差やばらつきがあり、方法も寸分違わず同じというわけにはいかない。そのため、良品を生産できるような生産条件を設定しても、4Mのばらつきが一定の水準を超えてしまうと不良品が発生してしまうのだ。裏を返すと、品質問題が起きない生産工程というのは、「4Mのばらつきを一定水準内に抑えることができた生産工程」だと言えるだろう。