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 強い工場をつくるためには、生産現場から徹底的にムダを排除していかなければならない。しかし、気付いた問題を場当たり的に解決していると、改善案同士の方向性がばらばらになってしまうことがある。その結果、十分な成果を得られなくなる懸念がある。

 そこで前回は、改善の方向性を持つべきだと指摘した。そして、改善すべきムダとして紹介したのが「9つのムダ」だ。9つのムダという着眼点を持つことは、付加価値のない作業を生産工程からいかになくすかを考えるときに、極めて有効である。

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 しかし、生産性を高めて強い工場づくりを実現しようと、9つのムダをなくす取り組みを始めると、生産現場のあちらこちらから不満の声が上がることがある。それは一体なぜだろうか。

強い工場づくりのポイント

 どの工場もムダをつくろうと思っているわけではない。しかし、現実には生産現場には多くのムダが存在している。9つのムダを徹底的になくすことができれば、2割程度の生産性であれば比較的簡単に改善することができる。

 それなのになぜ、ムダをなくす取り組みを行おうとすると、生産現場のあちらこちらから不満が出るのだろうか。それは、9つのムダが、今まで生産活動を継続してきた過程で、どうしても発生してしまう類いのものだからだ。

 例えば、「検査のムダ」を例に挙げて考えてみよう。品質改善の活動を行ってはいるものの、出荷品質を確実に保つためには工程内の検査が必須だと考えてしまう。実は、品質改善に関して根本的な解決を図るためには、さまざまな調査や分析、設計そのものの変更などが必要とされる場合もある。つまり、時間もコストもかかってしまう。これに対し、検査を実施すれば比較的簡単に出荷品質を確保することができる。つまり、楽なのだ。ところが、易きに流れているにもかかわらず、「検査」という言葉には弱い。こうして、検査にムダがあるときも「検査」という一言でムダが正当化されてしまうのだ。

 強い工場をつくろうとしても、このような過去の経緯にとらわれたり、現状の取り組みを是認してしまったりすると、ムダの排除(すなわち、徹底した生産改善)は実現できない