古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
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古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 工場の中で整理と整頓が進むと、物がスムーズに流れるようになり、それだけで生産性は大きく改善するはずだ。工場の中にある物(材料や仕掛品、製品など)が、工場の中で滞留することなく、速やかに工程を進んでいく姿こそが、誰もが理想とする「流れる工場」だからである。

 だが、それだけではまだ十分に強い工場とは言えない。工程への投入前や、工程の完了後、そして工程間で滞留がなくなれば生産性は上がる。しかし、工程そのものをさらに効率化して生産性を高めることも重要な課題だ。工程改善にはさまざまな手法がある。今回は、数ある手法の中から生産性の改善に必要な「着眼点」を紹介しよう。

 明確な着眼点があると、改善内容の方向性をはっきりと打ち出せる。思いつきで改善する場当たり的な改善や、散漫な取り組みを避けることもできる。

強い工場づくりのポイント

 工場で働くメンバーの誰もが「あ、これはムダな行為だ」と判断できる共通の「物差し」があり、常にその物差しを念頭に改善が進められている工場は強いものだ。逆に、そうした物差しがなく、メンバーによって「これはムダだ」「これは仕方がない」「何が悪いの(悪くないじゃない)?」などと判断や評価がばらつくようでは、工場の改善はうまくいかない。

 改善すべき点、なくすべき点、問題だと思う点が、工場で働く全員の共通認識になっていなければ改善は進まない。結局、改善に対する感度の高いメンバーがいる職場は改善が進み、感度の低いメンバーしかいない職場では改善は進まない。要は、工場で職場を指揮する人の改善への感度次第で、ばらつきが発生してしまうということだ。これでは強い工場とは到底言えない。

 そこで、今回は工場における「善悪の基準(=物差し)」を紹介しよう。それは「ムダ・ロス視点」だ。文字通り、ムダやロスを見逃さないための重要な改善の着眼点である。