古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
[画像のクリックで拡大表示]
古谷 賢一=ジェムコ日本経営、本部長コンサルタント、MBA(経営学修士)
 前回、工場に流れをつくる方法として、「5S」のうちの「整理」が極めて有効な手段であることを紹介した。加工の職場でも組み立ての職場でも、今の生産に必要なものだけを供給すること。そして、生産の進捗とともに次に必要な物を順次供給していくことがポイントだ。そのためには、生産現場を「要るもの」だけにする整理が必要というわけだ。

 しかし、たとえ整理を実施しても、それだけでは不十分だ。「要るものだけが置かれた職場か否か」「生産に必要なものが適切なタイミングで用意されているのか否か」。これらを生産現場を一目見ただけで把握できなければ、適切に工場を管理することはできないからだ。

 そこで今回は、工場に流れをつくるもう1つのキーワードを提示する。このキーワードから、さらに工場力を強化するために「具体的に何をすべきか」を解説していこう。

強い工場づくりのポイント

 「見える化」という言葉は、多くの人が聞いたことがあるだろう。製造業では、誰もが知っておくべき言葉と言っても過言ではない。では、一体「何」を「見える」ようにすればよいのだろうか。実は、このことを正しく理解している人は意外に少ない。

 「見える化」とは、多くの場合、「(問題の)見える化」を指す。つまり、「生産の進捗は予定通りか」「設備や作業には異常がないか」「安全や品質に問題はないか」という具合に、生産現場が正常に回っているかどうかをその場で誰が見てもすぐに分かるようにすることが「(問題の)見える化」だ。

 冒頭に示した通り、物が流れる工場をつくるためには次の条件を満たす必要がある。「生産現場を徹底して整理する」「生産現場に必要な物だけがある状態にする」「必要な物を必要なタイミングで適切に用意する」「誰が見てもその状況が分かる状態にする」。これらの条件を満たすことで、問題が発生すればすぐに気付いて対処することができる。物が流れる工場(=プロセスがよどみなく進む工場)にはこうした取り組みが必要不可欠なのである。