日経テクノロジーオンライン読者の皆さん、初めまして。ITproからの皆さん、こちらでもよろしくお願いします。ムゲンコンボの手塚武です。この連載では「ソシャゲの秘密」をゲーム企画や開発の観点からいろいろ語っていきたいと思います。一般向けにやさしく話していくつもりですので、お気軽にお付き合いください。

写真●2016年9月7日の米アップルのイベントに登壇して「スーパーマリオラン」を紹介した任天堂の宮本茂代表取締役
写真●2016年9月7日の米アップルのイベントに登壇して「スーパーマリオラン」を紹介した任天堂の宮本茂代表取締役
(出所:アップルのストリーミング動画をキャプチャ)
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 任天堂のスマホゲーム第1弾の「スーパーマリオラン(SUPER MARIO RUN)」。先日、2016年12月15日からの配信開始と価格が発表されました。「え?任天堂は既に『Pokemon GO(ポケモンGO)』やってるやん?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ポケモンGOはあくまでグーグル傘下の米ナイアンティックが開発・配信するゲームです。任天堂は「ポケットモンスター」のライセンサーであるゲーム企画会社のポケモンとナイアンティックの株主という立場です。16年3月にスマホ用のコミュニケーションアプリ「Miitomo」はリリースしていますが、任天堂自身が配信するスマホ用ゲームとしては、このスーパーマリオランが初めてのタイトルになります。

任天堂主導で開発された? その証拠が課金方式に見える

 任天堂のスマホゲームといえば、DeNA(ディー・エヌ・エー)との提携が思い出されます。任天堂の公式発表でもマリオランの開発協力・運営協力として同社の名前がクレジットされてますが、実際のところ今回のマリオランでどれくらいの貢献があったでしょうか? もちろんその点は明らかにはなっていないのですが、マリオランに関しては、大半が任天堂主導だと僕は見ています。それが垣間見えるのが今回ご説明する課金モデルとゲーム性です。マリオランはいわゆる「ソシャゲ」の主流とは、課金モデルもゲーム性も異なるのです。

 まずは「スーパーマリオラン」の課金モデルについて整理しておきましょう。任天堂の発表(iPhone & iPad向け『SUPER MARIO RUN』配信日および配信国決定のお知らせ)によると、配信開始は12月15日。対象は全世界151カ国で、日本語、英語など11カ国語に対応します。課金はダウンロードと一部のステージのプレーが無料で、9.99ドル(または9.99ユーロ/1200円)を支払うと、全てのステージが開放される、という仕組みのようです。つまり、任天堂の先代社長、故岩田聡氏が常々おっしゃっていたように、「一部のユーザーからたくさんの課金を得るガチャモデルではない課金方式」を選んだわけです。