オンラインゲームやゲーム配信向けのサーバーソフトなどの開発を手掛けているプログラマーの中嶋謙互です。初めまして。このコラムでは主にゲームの技術に関して考えたことを書いていきたいと思っています。
今回は、オンラインゲームのプラットフォームSteamで2016年10月7日に発売されたばかりの新しいインディーズゲーム「深セン I/O(Shenzhen I/O)」(開発Zachtronics、1480円)をみなさんにご紹介したいと思います。というのはこのゲーム、エレキ技術者の日々の仕事をゲームにしたと言ってよい内容だからです。
深セン I/Oの最大の特徴はデジタル機器の開発そのものをゲームにしてしまうというアイデアにあります。ゲーム内でプレーヤーは、香港にほど近い電子技術産業の集積地である中国・深セン市のある電子機器メーカーの新入社員となって業務にあたり、会社の仕事をこなしていくという設定になっています。プレーヤーは設計ソフトを使い、開発する電子機器が目的通り動作するように、部品を組み合わせ、コードを書いて開発を進めます。実際にプログラムを書いてプレーするゲームは1980年代に海外で幾つか登場して市民権を得始めたジャンルで、国内では1995年の自律動作するロボットを設計するゲーム「カルネージハート」(アートディンク)で一気に市民権を得ました。深セン I/Oはそうした歴史に重要な1ページを加えたと感じる秀逸なゲームです。
このゲームで出社したらまず業務用のPCを立ち上げることになっています。「概念OS(ConceptOS)」という専用のOSが動作していて、社内メールや技術情報などにアクセスできます。ボスや同僚からの指示が、社内用のメールソフト「conceptMAIL」に届き、その指示に沿ってゲームを進めていきます。
メール右下の赤いラインがある「OPEN IN CONCEPT CAD」ボタンを押すと設計ソフトウエアが起動して、早速業務にとりかかれます。筆者は普段、ゲーム開発を本業としているのですが、このようにクリックしたら開発環境が直接立ち上がるボタンをメールに付けるのは、なかなか便利なアイデアに思えました。