2017年1月22日。僕はわくわくしながら日本の囲碁界の総本山である市ヶ谷の日本棋院を訪れました。「囲碁AI『Master』解説会」(関連記事:日本棋院のイベント紹介ページ)が開催されたからです。

日本棋院の建物
日本棋院の建物
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 会場に入ると、定員50人のはずなのにざっと100人ほどの人たちが既に席に着いてイベントの開始を待っておられました。ほとんどは囲碁ファンと思われる年齢高めの男性。簡単にいえばおじいさんたちです。しばらくすると、プロ棋士や囲碁関係者、最後には理系の研究者らしき人々などまで加わり、広い会場は200人ほどの人たちで一杯になりました。いつもの囲碁の解説会やAIの勉強会とは明らかに異なる客層です。

 イベントの冒頭、司会が聴衆に棋力を尋ねるとなんと半数以上が五段以上。これは異常な集団といってよいでしょう。僕のようなへなちょこ囲碁ファンではなく本気の囲碁マニアたちが、Masterをどう捉えているのか。プロの見方とアマチュア高段者の見方は同じなのか、違うのか、興味をそそられます。

聴衆には年配の方も目立つ
聴衆には年配の方も目立つ
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ネットに現れた謎の強豪棋士、トッププロを打ち負かして60連勝

 今回のイベントのテーマである「Master」とは2016年の年末に突如登場した謎の強豪棋士で、その正体はグーグル傘下のAI(人工知能)技術開発会社、英グーグルディープマインドが開発した囲碁AIプログラムです。2016年3月に世界トップのプロ棋士、韓国のイ・セドル九段を破った囲碁AI「AlphaGo」の改良版です。