2018年初めに調査会社各社が発表した半導体売上高ランキングの速報によれば、2017年は韓国Samsung Electronics社が米Intel社から首位の座を奪った(関連記事)。パソコン市場が停滞を続け、一方でメモリー市場の活況が続いている状況からは、この首位交代劇はほぼ予想されていた。

 それでも、25年間にわたり首位の座に君臨してきたIntel社にとって、衝撃は小さくないだろう。このままで良いのか、メモリー事業を強化すべきではないか、もっと積極的に新しいアプリケーションを開拓すべきではないのか、といった議論が社内外で巻き起こっているはずだ。今回は、Intel社がこの先進む道を、同社とその周辺の動向に目を配りながら占ってみたい。

 Intel社が初めて半導体売上高ランキングの首位に立ったのは、1992年である。その前年まで、1985~1991年の7年間にわたって首位を死守していたのはNECだ。筆者は当時、Dataquest社(現Gartner社)で半導体売上高ランキングの調査メンバーの一人だった。NECが1992年も首位の座を守るか、それともIntel社に抜かれるのか、両社の差がわずかだったこともあり気を揉んだ。

 結果としてDataquest社をはじめ多くの調査会社が、1992年の首位はIntel社だと発表した。だが筆者は実は今でも、1992年の首位はNECで、Intel社がNECを抜いたのは1993年だと信じている。

 というのも、年間為替レートの設定や、売上高の定義(ファウンドリー事業を含むかどうかや、売価は代理店渡しと顧客渡しのどちらで見るかなど)などの違いによって、各社の売上高を推定する際に数十億円の誤差はどうしてもゼロにできないという事情があるからだ。当時、米国San JoseにあったDataquest本社には、米国企業であるIntel社がランキング首位になることを喜ぶ雰囲気が明らかにあったと筆者は感じている。「1992年からIntel社が首位」と結論づけた背景の一端にはそうした雰囲気があったと思うし、調査会社の推定にそうした要素が影響することは否定できない。

 もちろん、今回のIntel社とSamsung社の差は僅差ではなく、調査会社による推定の誤差を議論する必要はないだろう。ただしその差の大小とは関わりなく、IHS Markit社やGartner社といった著名な調査会社が「Samsung首位」と発表したことそのものが、当該会社や業界に大きなインパクトを与えていくことになる。