WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)は2017年11月末、2017年以降の半導体市場予測を発表した。2017年の半導体市場については、前年比20.6%増という大幅な成長を見込む。これに対し2018年は、前年比7.0%の成長にとどまる見通しという。

 成長に急なブレーキがかかるとの予測だが、その内容を読み解いてみると、WSTS予測会議に参加している半導体メーカー各社の思惑も見え隠れする。以下ではそれを具体的に解説することで、WSTSの統計の読み取り方に対する筆者なりの視点を提案してみたい。

 今回発表された数字は、2017年11月14~16日に台北市で開催されたWSTS秋季半導体予測会議に基づく。WSTSでは、加盟している半導体メーカー43社が年2回(5月と11月)、予測会議を開催し、地域別と製品別の市場予測を行っている。

表1●地域別の予測(出所:WSTS)
表1●地域別の予測(出所:WSTS)
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 まずは表1に、地域別の予測を示した。2017年の予測を見ると、米州(America)の伸びが際立って高いことが分かる。これはサーバーやデータセンター向けの半導体需要が旺盛だったことが要因である。市場の絶対規模では、パソコンやスマートフォン、AV機器などの生産拠点が集中するアジア太平洋(Asia Pacific)が全体の過半を占めるものの、前年比成長率では米州を下回る。このことから読み取れるのは、中国やASEAN諸国で量産される電子機器よりも、クラウドインフラ側で半導体需要が大きく伸びていることだ。

 2018年の予測を見ると、市場全体として伸び率は鈍化するものの、米州の伸びが引き続き最も高くなっている。すなわち、2018年も半導体需要のけん引役はサーバーやデータセンター向け需要との見方である。

表2●個別半導体の製品別予測(出所:WSTS)
表2●個別半導体の製品別予測(出所:WSTS)
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 次に個別半導体の製品別の予測、具体的にはディスクリート、光半導体、センサーに関する予測を表2に示した。ディスクリートとセンサーは2017年に2ケタ%の前年比成長を予測しており、対して2018年は伸びがやや鈍化するという。一方、光半導体については2018年に伸びが加速すると予測している。CMOSイメージセンサーの用途が車載などへ広がることを見込んでのことだろう。IoT(Internet of Things)の市場が広がりつつある中、センサーの伸びを前年比1ケタ%にとどめている点はやや違和感を感じるものの、単価下落を厳しく見ているのかもしれない。

表3●集積回路(IC)の製品別予測(出所:WSTS)
表3●集積回路(IC)の製品別予測(出所:WSTS)
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 集積回路(IC)の製品別、すなわちアナログ、マイクロ、ロジック、メモリーに関する予測を示したのが表3である。全体として2018年は前年比伸び率が鈍化するとの見通しだが、注目すべきはメモリー市場に関する予測だ。2017年は、NANDフラッシュメモリーとDRAMの需要急増で前年比60.1%増という驚異的な成長が見込まれている。これに対し、2018年は一転して9.3%増にとどまるとの予測である。筆者が冒頭で、半導体メーカー各社の思惑が見え隠れするといったのは、まさにこの予測に関してだ。以下ではこの点について詳しく述べたい。