2017年11月9日に東芝が中間決算を発表し、国内大手電機メーカー8社の決算が出そろった。全体的に前期実績を上回る結果が目立っており、ポジティブな印象を受ける結果ではあったが、各社ごとに懸念材料も見え隠れする。以下では、各社の業績と事業環境について論じたい。

半導体事業売却で迷走する東芝

 経営再建中の東芝は、2017年度の上期売上高が2兆3862億円と前年比5.1%増。営業利益は2318億円と同1386億円の増益を達成した。ただし営業利益のほぼすべてを半導体事業、それもメモリ事業だけで叩き出しており、この虎の子の事業の売却を巡ってさまざまな問題が露呈している。

 同社はメモリ事業を売却することで債務超過状態からの脱却を図り、上場廃止をまぬがれる考えだが、パートナーである米Western Digital社(WD)との交渉が難航したことでWD以外の事業会社や金融機関への売却を進めようとし、この先の見通しは不透明である。WDとの争いが長期化することで窮地に追い込まれるのは東芝自身であり、プラスになる要素など一つもない。東芝は2017年11月19日には新株式発行による約6000億円の資金調達を発表しており、これも事業売却が2017年度内に完了しない可能性を考慮したものと見られる。

図1●東芝の2017年度上期決算(会社公表資料よりGrossberg作成)
図1●東芝の2017年度上期決算(会社公表資料よりGrossberg作成)
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 エネルギーやインフラ関連の事業環境は堅調であるにも関わらず、東芝のそれらの部門は減収に低迷している。同社と中長期的なビジネスを継続できるのかどうか、顧客が躊躇している影響が現れているのではないだろうか。実際、メモリ以外の半導体事業では、顧客がメーカーの事業継続性を懸念して購入量を制限する事例は少なからず存在する。そして図1からも分かるように、メモリ事業を売却してしまうと柱となる事業は存在せず、中長期的にはこれが大きな懸念材料だ。

ソニーはイメージセンサーが復活

 ソニーは、2017年度上期売上高が3兆9206億円と前年比18.7%増。営業利益は3618億円となり、同2599億円の大幅増益だった。

 モバイル・コミュニケーション部門は、売上高が前年比ほぼ横ばい、営業利益は同30億円の減益である。通期のスマートフォン販売見通しを100万台下方修正したが、オペレーションコストの削減などの結果、収益予想は変更していない。

図2●ソニーの2017年度上期決算(会社決算資料よりGrossberg作成)
図2●ソニーの2017年度上期決算(会社決算資料よりGrossberg作成)
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 ゲーム&ネットワークサービス部門は、売上高が前年比20.1%増、営業利益が同95億円増と好調に推移した。PlayStation4(PS4)の売り上げが好調で、通期の販売見通しを100万台上方修正した。ただし販売促進コストの増加などを見込み、収益予想は変更していない。

 イメージングプロダクツ&ソリューション部門は、売上高が前年比21.3%増、営業利益が同197億円増となり、熊本地震の影響があった前年から大きく回復した。通期のデジタルカメラ販売見通しを20万台上方修正したが、この部門についても収益予想は変更していない。

 ホームエンタテインメント&サウンド部門は4Kテレビが牽引役となり、売上高が前年比18.5%増、営業利益が同92億円増と好調に推移した。通期のテレビ販売見通しを50万台上方修正し、収益予想も180億円上方修正している。

 半導体部門は、売上高が前年比27.9%増、営業利益が同1525億円増と、やはり熊本地震の影響があった前年から大きく躍進した。スマートフォン向けのイメージセンサーが依然として絶好調で、収益の柱に返り咲いた。音楽部門の増益も収益改善に貢献しているが、最もポジティブに評価できる点は、半導体が収益の柱に復活したことと、AV機器の戦略製品が増益に貢献していることだろう。

 ソニーは通期業績計画を売上高で2000億円増(8兆5000億円)、営業利益で1300億円増(6300億円)と上方修正した。