以前のコラムでMIMO(Multiple Input and Multiple Output)と呼ばれる、送信機と受信機の双方で複数アンテナを用いる送受信技術について解説させていただきました。MIMOでは、複数アンテナにより無線信号を空間領域で重ねる(多重する)ことができ、単一アンテナを用いる場合に比較して送受信できる情報量を増大させることができますが、送信される信号が空間領域で重なりあって、お互いに干渉しあいます。そのため受信側で、干渉を受けた信号を解きほどき、情報を分離、検出する必要が出てきます。

 今回のコラムでは、無線通信での受信側での信号処理方法の標準化状況についてお伝えできればと思います。

さまざまな干渉信号

 無線通信環境にはさまざまな干渉信号が存在します。例えば、基地局から端末まで無線信号が送信される下りリンク通信環境を想定してみましょう(図)。冒頭で述べたように、1つの端末に対し基地局から複数の無線信号(ストリーム)が送信された場合には、送信された複数の無線信号間の干渉(ストリーム間干渉)が生じます。

[画像のクリックで拡大表示]

 一方、複数の端末に対し基地局から無線信号が同時に送信された場合には、それぞれの端末に送信された無線信号間の干渉(端末間干渉)が生じます。また、複数の基地局を考慮する場合には、基地局間の干渉も生じます。