2016年11月16日に掲載した前回の本コラム「5Gの標準化まずはブロードバンドから」ではユースケースや運用方針を工夫して実現された段階的な5Gの標準化スケジュールについて説明しました。そこからかなり間が空いてしまいましたが、その間も3GPPでは5Gに対するかんかんがくがくの議論が行われていました。

Release 15以降で利用される予定の5Gの新しいロゴ
Release 15以降で利用される予定の5Gの新しいロゴ
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 私自身も物理レイヤーの検討グループを束ねる役割を持つメンバーの1人として5Gの技術検討の促進に向け色々と動き回っていました。今回のコラムでは、5Gの特徴の1つである広帯域化の実現方法について最新動向をお伝えできればと思います。

1GHzもの広帯域をいかにサポートするか

 最近の議論の中で盛り上がりを見せている技術項目の1つが、基地局・端末の実現方法を配慮しながら、非常に広い周波数帯域をどのようにサポートするかという議論です。

 以前のコラムでも解説した通り、これまでの技術では、キャリアアグリゲーション(CA)と呼ぶ技術で広帯域化を実現していました。具体的には、Release 10 LTE (LTE-Advanced)において、コンポーネントキャリアと呼ばれる基本周波数ブロックを最大20 MHzの周波数帯域で定義し、このコンポーネントキャリアを複数束ねて広帯域化します。キャリアは最大5つまで束ねられるため、最大100MHzの帯域が利用可能です。

 コンポーネントキャリアを最大20 MHz帯域とした理由は、20MHz帯域を最大の周波数帯域としてサポートしているRelease 8 LTE (LTE)との後方互換性(バックワードコンパチビリティー)の実現にありました。

 一方、5GではLTEやLTE-Advancedとの後方互換性の無い新しい無線アクセス技術によって、後方互換性という縛りを解いたアグレッシブなゲインを追及できます。特に数10 GHz帯以上の高周波数帯では、1GHz程度の非常に広い周波数帯域を5G用の周波数として検討できます。しかしこの周波数帯は、これまで携帯電話などに使われていない帯域であることから、後方互換性を考慮せずに、いかに効率的に広い周波数帯をサポートするか、といった点が検討課題になっています。

     私のグループでは、広帯域化を検討するにあたり、
  • コンポーネントキャリアの最大周波数帯域をどの程度にすべきか?
  • キャリアアグリゲーションによってコンポーネントキャリアを束ねる場合には、コンポーネントキャリア数を幾つ束ねるべきか?
  • などの観点から技術議論が行われました。