イラスト:ニシハラダイタロウ
イラスト:ニシハラダイタロウ
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 こちらからのアポイントにいつでも応じてくれる人がいる。いつもそうなので、不思議に思って尋ねてみた。

「失礼ながら、毎日、出社されているのですか?」
「いいえ、社員としての籍はありますが席はありません」

 何か笑い話のようなやりとりになってしまったが、要するに、正社員だが毎日出社しなくてもよく(時々出社して報告するらしい。ちなみにこの会社は一部上場企業)、自分で決めたプロジェクトを自分のペースで進め、それを会社の成果にするのが仕事だというから驚いた。

 昨今、「働き方改革」などと新しい働き方が模索され、それをどのように進めるかといった悩みを持つ企業が多い中、その先の先を行く、働き方はもちろん、仕事自体を自らつくっているというのだから、何という先進性だろう。

 この人の仕事の詳細は言えない、いや説明が難しくて言えない、というのが正直なところ。何をしているのか一口では言えないくらい、実に様々で多様なのである。強いて言えば、クリエーターとかプロデューサーと呼ぶのだろうが、とにかく多才な人だ。面白いと思えばどこにでも飛んでいき新事業や新商品のネタを仕入れているというのだが、掛かる経費は会社持ちだから、自由社員とでも呼ぼうか。

 誰もが思うだろうことを聞いてみた。

「どうしてそんなことができるんですか?」
「自分の所属は新事業開発部で、事業を起こさなくてはいけないので『何でもあり』でやらせてくれないとできないと言ったら、そうしてくれました」

 また驚いた。これだけ自由にさせてくれる会社の度量がすごいのか、はたまたこの人の実力が飛び抜けているのか。その回答が、…

「自分で仕事を創っているのですから当然です」

 であった。本当にサラリーマンなのかと疑う始末である。