最初から大樹の陰を望むのはいかがなものか

 多分、優良なエントリーシートを書くのは、主には大会社に行くための手段であると思うのだが、それは何よりその大会社ならつぶれることもなく安泰である、つまり「寄らば大樹の陰」に入りたいという願望ではなかろうか。

 つまらぬ詮索をするなとおっしゃる向きもあろうが、これから社会人になろうという若者が最初から大樹の陰を望むのはいかがなものか、さらには、自然界に例えれば最初から大樹の下の草木になろうというのはいかがなものかと、あえて申し上げたいのである。

 森を見れば分かる。大樹の下の草木には日が当たらないから、当たり前だが大きくなれずに、やがてはそのまま枯れていく。つまり、最初から大樹の陰にいるというのは、ずっと日陰にいるということなのである。だが、大樹になるのを最初から諦めて、ずうっと小さな草木でいたいと本気で考えている人など、果たしているのだろうか。

 私は極めて前向きでかつ楽天的な物の見方しか知らないので、そんな人がいるはずはないと思っているが、もしもおられるのなら申し上げたい。

 小さな草木に甘んじること、それ自体が大きなリスクではあるまいか。根っこが弱く幹も細い草木はちょっとした風雨にも負けて、倒れたり流されてしまうではないか。

 だから、大樹になる、あるいは大樹のいない原野に根っこを張るのがいいのである。そこには大樹がないのだから日照が良く、深く張った根っこと強靭な幹がいや応なく形成され、その結果、風雨にも耐えられる樹木となっていく。

 それが、自分はどのような仕事をして、どのような未来を創るのかを決めることなのである。

 草木になりたいのか、本物の樹木(大樹)になりたいのか、その志を立てること。これが、エントリーシートに書くべきことなのだ。

 ところで、私はエントリーシートを書いたことがない。就職したことがないのだから当たり前だ。しかし、人生はいつ、何が起こるか分からない。だから、誰か高齢者再雇用向けのエントリーシートの書き方を教えてくれないか? なんちゃって(笑)。