だから「診る」のである

 申し上げたいのは、売り上げが下がったときにこそ、やるべきことがあるということである。売り上げが下がったとき、ここをチャンスと見るのか、それとも嘆くのか。それを「診る」のが原理・原則だと思うのである。

 売り上げが右肩上がりでいるとき、多くの会社は業績が良くなっていると考えてしまうし、何よりも気分がいい。しかし、一見、順風満帆な姿のその陰に、思わぬ落とし穴や予期せぬ課題、さらには難題が待ち受けているのではあるまいか。人間で言えば「体調万全で絶好調!」と思っていた直後、人間ドックに行ったら重大な病気が見つかって即入院……そんなこともあるのではないか。だから「診る」のである。

 あえて言いたい。私は、右肩上がりは危機の前兆現象だと思う。誤解を恐れずに言うと、右肩上がりのときは浮かれてしまって今しかできない、やるべきことがかすんでしまい、その機会を失ってしまう危険がある。

 もっと言えば、右肩上がりにすることで会社に決定的なダメージを与えるような問題を先送りする、いわゆる粉飾経営に手を染めることもあるではないか。

 最近、大手や中堅企業の多くが売り上げを重視する傾向が強くなったと感じるのは私だけだろうか。よく見れば、過去にあれだけの業績を誇っていた会社が起こす事件の大半は、売り上げを多く見せ掛ける粉飾である。あるいは、利益を捏造するために下請け企業をいじめる経営も同じこと。自分勝手な右肩上がりのデッチアゲなのである。

 だから、右肩下がりもアリなのだ。下がったとき、そこにチャンスがあるとみればいい。右肩下がりをよく見れば、自社に潜んでいた病巣が現れることもあるし右肩上がりのときには見えなかった利益が出てくることもある。

 そう考えると、右肩下がりこそ経営基盤を固めるチャンスと言えまいか。

 ところで、私の会社の業績はどうかって? 来たな、来た来た。そう聞かれるに決まっている。

 実は、弊社の業績はとっくの昔から低空飛行を通り越して滑走状態なのである。離陸もしないし着陸もしない、ずっと滑走路を走っている状態なのである。

 一体、このような状態を何と言えばいいのだろう。いっそのこと、右肩上がりも下がりもない「カタ(肩)ナシ」と言おうか……(笑)。